私的・映画テン年代ベストテン

映画テン年代ベストテン」なんて企画をやっていたというのを今朝知ったので、慌てて書きました。レビューとかどこかにメモを残しておかないものは、そもそも見たことを忘れてしまうという話があり、2010年代縛りという条件なのに、なんとなく後半に偏っているのはしょうがない……。

  1. カメラを止めるな!(2017年、上田慎一郎監督)
  2. 映画 聲の形(2016年、山田尚子監督)
  3. 君の名は。(2016年、新海誠監督)
  4. この世界の片隅に(2016年、片渕須直監督)
  5. 君の膵臓をたべたい(2018年、牛嶋新一郎監督、アニメ版)
  6. ガールズ&パンツァー 劇場版(2015年、水島努監督)
  7. 劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~(2019年、石原立也監督)
  8. ちはやふる -結び-(2018年、小泉徳宏監督)
  9. 青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(2019年、増井壮一監督)
  10. トイ・ストーリー3(2010年、リー・アンクリッチ監督)
  1. カメラを止めるな!(2017年、上田慎一郎監督)

    正直、“映画の舞台裏”のような作品を映画ランキングのトップに挙げるというのは微妙な気持ちもあるんだけれど、間違いなく衝撃的だった作品。テレビでも放送されたし、Amazon Prime Video で配信もされているので、もう“ネタバレ禁止”する必要はないかと思うけれど、ユニークな構成(と前半の手振れ具合)から「クローバーフィールド」を思い出しつつも、家族愛などを交えたストーリーが秀逸。さらに、名も知れぬ役者たちも人気俳優に劣らぬすばらしい演技だった。テレビで紹介されたようすをみると、これも監督の演技指導があればこそということらしい。上田監督は役者モノの作品が続いているけれど、もっとストレートな作品を見てみたい。

  2. 映画 聲の形(2016年、山田尚子監督)

    2016年は3つの期待作があり、そのすべてが良作だったという稀有な年だった(そして、このランキングでは2位~4位)。山田尚子監督作品では、「たまこラブストーリー(2014年)」も好きだけれど、やはり本作が秀逸。本作の内容については「みんなのシネマレビュー」への投稿から引用。
    9点(=今年一番の作品)と評してよいかわからないし、賛否はありうると思うし、好き嫌いもあるだろう。デートムービーになるとはいいがたい。しかし、私にとっては制作発表からの期待に十分応えてくれた、すばらしい作品。聴覚障害とイジメという難しいテーマを扱いつつも、“かわいそう”という感情とは違う意味で心が揺さぶられる。
    本作は障害やイジメで悩んでいる人たちの気持ちが分かるというものではないし、それを意図した作品ではないだろう。その意味ではそれらを素材としてだけ使っていることに不満を感じる人もいると思う。もちろん配慮に欠けているわけではない。協力として日本ろうあ連盟の名前もある(これは原作でも同じ)。
    また、原作の緻密さを思えば将也と硝子の関係に絞り込まれているし、他の人物も改変や省略されている部分はあるから、物足りないとか不満を感じる人がいるのもわかる。しかし、アニメで二時間超という尺、かつ美しく映像化された本作は恵まれた作品だと思う。初見では原作(2巻以降)を読まないでいたが、映画として完結していた。また、原作に比べてエグい描写が弱まっている面もあるが、もし原作通りに1クールのテレビアニメとして制作しようとしたら、地上波では放送できなくなるんじゃないだろうか。劇場での上映に比べて、地上波というのは制約を受けやすいものだ。
    【ネタバレ注意】小学生時代に聴覚障害が理由でイジメを受けていた硝子がイジメていた将也と再開し、やがて恋心を抱くまでになる。「イジメてたやつを許すのはともかく好きになるとか設定がおかしい」という批判も見たが、もともと硝子は将也を嫌がってはいなかったわけで、その批判は当たらないと思う。丁寧に書き込まれた街並み、硝子が告白に失敗して足をバタバタさせているシーンなど細部にまで神経の行き届いた表現、難しかったであろう早見沙織さんの演技、すばらしい面を挙げればキリがないほどだ。多くの人に鑑賞してほしいと思う。

  3. 君の名は。(2016年、新海誠監督)

    言うまでもないアニメの金字塔。ストーリー展開については、新海監督らしさを抑えて制作側と相談しながら進めた結果の大成功というのも興味深いところ。新海誠監督の「天気の子(2019年)」も悪くはないけれど、やはりこちら。

  4. この世界の片隅に(2016年、片渕須直監督)

    世間でクラウドファンディングが流行り始めた頃に、実はなんとなく参加した作品。その当時は片渕須直監督の「BLACK LAGOON」(テレビアニメ)がよかったという程度の知識で、前作「マイマイ新子と千年の魔法」はそんなに好きではなかった(タレント声優が微妙だった)。せっかく参加したので応援はしていたし、間違いなく良作なんだけれど、世間で大ウケした“のん”の起用は個人的には疑問。2~4位に挙げた2016年の良作アニメ映画で山田監督や新海監督が新作に取り組んでいるのに、片渕監督が本作の長編版に取り組み続けているというのも、応援しないわけではないんだけれど「なんだかなあ」(CV安野希世乃)という感じ。

  5. 君の膵臓をたべたい(アニメ版、2018年、牛嶋新一郎監督)

    小説の名前だけは聞いたことがあるという程度で、スプラッターな印象しかなく、興味はなかった。そんなときに電子書籍でコミック版の序盤だけが無料公開されていたのを読んでみて「スプラッターじゃない」ことが判明。実はいい話なんじゃないかと急に期待感がわいてきた。結果としては素晴らしい作品で、この年のアニメ映画のトップ。
    本作は興行的にはあまり成功しなかったらしいが、2017年の実写版は大ヒットしたそうだ。個人的には評価していない。アニメ版の封切前に実写版をテレビ放送したのがよくなかったのではないか、と思えるくらいだ。老眼で文字を読むのがツラくなった昨今、本作はコミカライズだけでなく原作小説までちゃんと読んだのだが、アニメ版の方が原作にずっと忠実。なお、聖地めぐりをしていたときに、アニメ版の監督と声優さんに偶然出会えたのもよき思い出。

  6. ガールズ&パンツァー 劇場版(2015年、水島努監督)

    「男の子って、こういうのが好きなんでしょ」とはいえ、“萌え”と“戦車”という接点のなさそうなものを組み合わせて成功したテレビアニメが元。映画冒頭で軽くダイジェストが紹介されるとはいえ、テレビシリーズを見ていない人には理解不能な作品だろうから、ランキングとしては微妙な気もするけれど、私的なランキングに挙げないわけにはいかない。昨今、テレビアニメがヒットすると、その流れで劇場版を作るということが流行っているけれど、早い時期にその形で大成功した作品でもある。
    軽くネタバレすると、前半は戦車戦と日常話、後半は丸ごと戦車戦という構成で、テレビシリーズを受け継ぐ続編としては申し分のないストーリーと、制作に手間暇かけたであろう映像で見事に昇華した。
    ちょうどシネマシティの爆音上映で「マッドマックス 怒りのデスロード」が話題になった後の作品でもあり、個人的には「マッドマックスはガルパンの前座」。シネマシティの歴代興行動員数トップであり、「君の名は。」すら及ばなかったらしい(なお、2位は「ボヘミアン・ラプソディ」)。
    なお、水島監督は最終章として続編6部作(劇場上映のあるOVA)に取り組んでいるけど、それぞれに1年以上かかっていて気持ちがダレてきてしまっているのが残念。「アバター」の続編よりはマシかもしれないが。

  7. 劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~(2019年、石原立也監督)

    ものすごく好きなテレビシリーズが元。テレビシリーズの1期、2期について、それぞれの総集編映画があり、スピンオフ映画の「リズと青い鳥」と、完全新作として本作が公開された。実は「リズと青い鳥」はあまり好みではないけれど、本作は素晴らしかった。今年のベスト作でもある。

  8. ちはやふる -結び-(2018年、小泉徳宏監督)

    2016年の2部作「ちはやふる -上の句-/-下の句-」のヒットを受けた作品で、どれを選ぶか迷うけれど、ここは完結編としての本作を挙げておく。マンガやアニメの実写化は、ガッカリさせられることが多い中、長い原作のエッセンスを活かしつつ、うまく映画の長さにまとめ上げた良作。脚本も手掛けた小泉監督の手腕なのだと思う。アニメも良作で、実写映画の成功があったためか6年ぶりに3期も放送されることになり、幸せな作品だと思う。

  9. 青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(2019年、増井壮一監督)

    これもテレビアニメが元だが、テレビアニメがヒットしたから制作することになったのではなく、元から予定されていた。いずれにせよ、テレビアニメを見ていないと(あるいは原作を読んでいないと)背景が分からないだろうというのは、これも同じ。
    テレビアニメから派生した作品には、他にも「涼宮ハルヒの消失」(涼宮ハルヒの憂鬱)、「たまこラブストーリー」(たまこまーけっと)、「映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-」、「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」などの良作があるので、どれを選ぶか悩ましいのだけれど、京アニ作品はすでに2つ選んでいるのと、記憶が新鮮なこともあるので、本作を選出。

  10. トイ・ストーリー3(2010年、リー・アンクリッチ監督)

    なんか、ひとつも洋画が入ってなかった。“過去最高の3作目”という評価が的確。