2021年日本のアニメ映画ベスト10+α

そのうち実施されるであろう破壊屋さんの「2021年日本のアニメ映画ベスト10」のためのリストです(昨年版)。いつもはツイートでまとめていますが、感想は長短あるので、ここにまとめておきます。
事前に予想もしていましたが、2021年は飛び抜けて傑作というほどの作品はありませんでした。その代わり、だいたいどれも良作でした。今年は“つまらなそうだけどネタと思って劇場まで見に行く”というものがあまりなかったということはありますが、そういうものでも良作という印象でした。少なくとも今年劇場で見たもので駄作と思うものはひとつもありません。ただ、良作と思っても本筋にポリコレ(倫理)的な問題があるという作品が目立ちました。
また、2020年の「鬼滅の刃」が円盤(blu-ray/DVD)の発売から数か月でテレビで放送されたのも驚きでしたが、今年は円盤発売前、あるいは円盤の発売が決まっていないのに見放題サービスでの配信が始まるものがいくつもあります。時代ですね。
以下では順位をつけていますが、今年は“順不同”(全部5.5点)で投票するつもりです。14位くらいまでは同じ評価にしてもいいくらいです。なお、レビューには軽いネタバレが含まれるものもあるので、先に順位だけ並べておきます。

シドニアの騎士 あいつむぐほし
②映画大好きポンポさん
③漁港の肉子ちゃん
④アイの歌声を聴かせて
⑤呪術廻戦0
⑥竜とそばかすの姫
⑦サイダーのように言葉が湧き上がる
⑧ガールズ&パンツァー最終章第3話
ソードアート・オンライン プログレッシブ 星なき夜のアリア
⑩シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
⑪EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション
プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章
⑬フラ・フラダンス
⑭サマーゴースト
⑮岬のマヨイガ
攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争
プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章
神在月のこども
⑲100日間生きたワニ
⑳劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―
劇場版 生徒会役員共2
夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
㉔絶望の怪物

※2021年の劇場アニメ全作品のリストはこちら→ AnimeMovie2021.xlsx

シドニアの騎士 あいつむぐほし [Amazon]

テレビシリーズに続く完結編。そういう意味では単体の映画として成り立っているわけではなく、トップにするかどうかは迷いました。ただ、今年blu-rayを買った劇場アニメは今のところこれだけです。それもテレビシリーズを揃えていたから、という消極的な理由な上に、円盤発売前に配信が始まったので、キャンセルしようかとすら思いました(しませんでしたが)。
もともとテレビシリーズがわりとキレイに終わったので、本作は蛇足になりそうな気もしていたのですが、ちゃんと決着をつけられた感じです。むしろ結末は、あまりにご都合主義という印象もありますが、おおむね原作通りです。映像は、さすがにポリゴン・ピクチュアズ。直接の評価ではないですが、シネマシティの爆音・極音上映もよかったです。

映画大好きポンポさん

もとはpixivで話題になった作品です。実はコミック本になったら余計な小ネタが挟み込まれてオリジナルの勢いを失っていた感じだったのですが、本作はまさに“映画好き”が作った感じで勢いよく作られていました。アニメで追加されたであろうエピソードも、映画好きの思い入れを感じるものでした。細かい部分で気になる点はありますが、原作の「90分」にこだわった作り(エンドロールを除く)もよかったです。ただ、“よくできている”感じはあるものの、“胸に来る”という感じではないので、これも2位にするか迷いました。

漁港の肉子ちゃん

本作は明石家さんま企画・プロデュースで、製作&制作が「吉本興業」&「Studio 4℃」というプペルと同じパターンでした。エンドロールでも最後に“明石家さんま”と表示されるくらい監督名よりも目立っていましたし、肉子ちゃんのキャラデザとか、コネ声優とか言われていて、パスするか、それでも(プペルと同じで)批判するからには見なきゃいけないか、という予想だったのですが、これがなかなかの良作でした。実のところ「頭が悪いけど一生懸命」という肉子は(キャラデザも含め)好きではないのですが、主役は子供でした。興行収入があまり伸びなかったみたいですが、“信者活動”しなかったからでしょうかね。

アイの歌声を聴かせて

出だしでこけたわりに内容がよくてロングランが続いていると噂の作品です。予告編がよくないという評価も見ましたが、実のところ“あの吉浦康裕監督が明るい作品を作りそうだ”と思って、私は「君の名は。」を狙っているのかと期待感を持っていた作品でもあります。実際、吉浦康裕監督の中では一番好きな作品で、ストーリーとしては、うまく作られています。ただ、今どきの映画としては倫理的に気になる点が散見されます。詳しくはこちらに書きましたが、他にも横断歩道のところにバス停があり、人が渡った直後に自動運転されているバスが急ブレーキもかけずにやってくる、という描写があります。人工知能(ロボット)が発達したという前提ですが、自動運転になってもそういう動作にはなりませんし、バスが来る直前に横断歩道を渡るサトミもサトミです。そこで転んだら死にますよ。どうでもいい作品なら、いちいちそういうことも気にしないのですが、本作は惜しい気持ちです。とはいえ、舞台挨拶からスタッフトークを交えて4回見てますし、年明けの監督トークも見に行く予定です。

呪術廻戦0

今年の劇場アニメの締めくくりであり、二匹目の「鬼滅の刃」とも言われる「呪術廻戦」の前日譚。テレビシリーズをおさらいして見に行きましたが、前日譚なので、基本的な設定と誰が生き残るかということが分かる程度です。私は、こういうバトルものは、そこまでのめり込めないというだけで、テレビシリーズが好きな人には十分な出来なんじゃないでしょうか。ハリウッド大作が軒並み延期されて映画館が「鬼滅の刃」だらけになっていた時期とは違いますが、歴代ランキング(100位)に入るくらいのポテンシャルはあるでしょう。しかし、分かっていたこととはいえ、終盤の展開で“とどめを刺すチャンスがあるならとどめを刺しておけよ”と思いました。これから新たな理由が明らかになるのかもしれませんが(一応伏線はあった)、鏖殺(おうさつ)したがってるキャラを放置したのはなぜなんでしょうね。

竜とそばかすの姫

個人的に、細田守監督は「バケモノの子」が折り返し点で、本作は「サマーウォーズ」未満、「時をかける少女」には程遠いというところです。「サマーウォーズ」を見直すと、本作の映像の細かさがよく分かるという程度に映像や音楽はよかったのですが、問題は終盤の展開です。ITmediaの記事で具体的に指摘されていますが、「アイうた」以上に致命的で、記事から引用すると「この作品は間違っている」。細田作品は、脚本に別の人を立てる方がよいんじゃないでしょうかね。次作には期待しています。

サイダーのように言葉が湧き上がる [Netflix]

とっくに完成していたけれど(映倫審査は2020年2月)、新型コロナで延期された上、「夏に見てほしい」からと1年先送りされ、最後の最後でさらに1か月延びました。ストレートなボーイミーツガールで、終盤の盛り上がりといい良作だと思いますが、これも“現代でこの設定は倫理的にキツい”と思う設定が主要な要素になっているんですよね。イシグロキョウヘイ監督曰く「作品作りにおいて言われて修正することはあるけれどポリコレ的なことはあまり気にしない」そうです。ちなみに、これも円盤発売前に Netflix で配信が始まりました。

ガールズ&パンツァー最終章第3話

高々50分程度のOVAに1話2年もかけるなよ、というのが毎度の印象です。面白いし、よく展開を考えるものだと思いますが、ある意味平常運転ですし、どう転んでも2015年の「劇場版」のインパクトには及ばないというのが正直なところです。あと、「それって卑怯だよね」という(戦争法では許されない)戦法が使われてます。まあ、ファンタジーなフィクションなので細かいことを気にしちゃ負けなんでしょう。

ソードアート・オンライン プログレッシブ 星なき夜のアリア

長く続いているテレビシリーズではキリト視点だったのに対し、ヒロインのアスナをメインに据えた、いわばリブート作品です。テレビ1期序盤のサイドストーリーのような内容です。テレビシリーズを見直すと映像の迫力は段違いですが、前作(オーディナルスケール)に比べると、どうしても新味に欠けます。バトル中心のストーリーになっているのも残念なところ。でも、続編が予定されていますし、見るつもりです。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| [Amazon]

(今のところ)今年の興収トップ作品です。ものすごい物量による映像は素晴らしいですし、3作目(Q)のぶっ飛んだ展開から、よく話にオチを付けたものだと思います。でも、なぜ庵野作品は「何かしないと気が済まない」んですかね。「トップをねらえ!」の最終話がああなったのも万策尽きたためみたいですし、テレビシリーズの最終2話がああなったのも時間切れのためみたいですし、望んだ表現じゃなかったはず。でも本作は十分な時間があった上で意図的に“やらかし”てます。もっとも、そうでなくてもストーリーの根本が「人類に大迷惑な親子」ってところにイライラします。あと、最後の最後でタレント声優というのも残念でした。順位を考えているうちにベスト10から外れそうになりましたが、入れないのもなんだかなと思って入れることにしました。

EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

この作品は迷いました。Netflixにある劇場版2作をおさらいすればいいだろうと思って、6~7年前に見たっきりのテレビシリーズの設定をすっかり忘れたまま「ハイレボ1」を見て、わけが分からないまま「アネモネ」を見て、わけが分からないまま本作の舞台挨拶まで見に行って、結局、わけが分かりませんでした。覚悟を決めて50話あるテレビシリーズをNetflixでおさらいして、もう一度「ハイエボ1」と「アネモネ」を見て、ようやくストーリーを理解し、ふたたび本作を見て、やっと展開が分かりました。なかなかいいじゃん。「テレビシリーズを見てなきゃ話が分からない」というのはトップに挙げた「シドニアの騎士」も同じですけど、劇場版だけで理解できないのは問題というか、「ハイエボ1」の不親切すぎます。あと、予告編に出てくるようなアクションの映像はいいんですが、日常シーンの描写ではけっこうボロが出ていた気がします。

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章

1時間作品。テレビシリーズの最後が尻切れ感があったので、あまり期待していませんでしたが、これも良作でした。オープニングからワクワクさせてくれるし、意外な出来事の連続というわけではないですが、設定を活かしたひねり過ぎないストーリーに魅了されました

フラ・フラダンス
ハワイアンズを舞台にした実写映画「フラガール」という傑作に対して、吉田玲子さんの脚本で、どんなものが出てくるかと期待していた作品です。全体的に“さすが吉田玲子”を感じさせる話作りではあるものの、“CoCo”の設定が微妙でした。好きな作品ではあるのですが、そういう設定は持ち込まずにすませてほしかったです。

サマーゴースト

劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」「ジョゼと虎と魚たち」のキャラデザやコンセプトデザインを担当されたloundraw氏の初監督作Z会のアニメCMを制作されたせいか、“ジェネリック新海誠”と呼ばれていたりするらしく、本作は40分のショートムービーでもあり、ほしのこえ」(新海誠監督、2002年、30分)を“予習”して鑑賞しました。実のところ内容には期待しておらず、ある意味見たという実績作りみたいなつもりでしたが、細かく気になる点はあるものの、まとまった話になっていました。冒頭5分が公開されているので雰囲気は分かると思います。

岬のマヨイガ

吉田玲子脚本+川面真也監督という組み合わせで、けっこう期待していた作品なんですが、わりと肩すかしでした。原作は未読ですが、フラグを立てたり折ったりというのが原作通りということなら、そちらが合わないということなんでしょう。おばあさんが万能すぎます

攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争

Netflixの1クール分を再編集して劇場公開した作品。CGキャラが“なんか違う”というのはさておき、攻殻機動隊って、いつも似たような展開じゃない?という印象。つまらないわけじゃないですし、それが“ファンに求められているもの”なのかもしれないですけどね。

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章

第1話の印象から期待しすぎていたせいかもしれませんが、導入部から分かりやすいありきたりな設定で、これも肩すかしでした。ある意味、平常運転ではありますが、いまいち盛り上がりに欠け、残りの4作でどう転がしていくのかは気になります。

神在月のこども

たまたま去年、出雲大社に行ったから、という理由だけで見た作品です。キービジュアルや公式サイトから、あまり期待はしていなかったのですが、映像もストーリーも古き良き時代のアニメという感じでした。聖地巡礼はしてみたいというか、するつもりだったのですが、予定していた時期の天気が微妙だった上に、「アイの歌声を聴かせて」のトークショーがあったので見送ってしまいました。機会があれば、いずれ行こうとは思っています。これも円盤の発売予定は公表されないまま Netflix での配信が決まりました。

100日間生きたワニ

原作コミックも含め色々言われていましたが駄作とは思いません。原作を思えばアニメの動きは想定の範囲内で、ちゃんと雰囲気を守ってストーリーが作られていました。もっとひどい映画はいくらでもあります。どちらかというと本作を大作扱いする方が問題だと思います。劇場で「サザエさん」を見た感じというのは言い得て妙。

劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか― [dアニメストア]

公開時期が出張と重なり、出張先近くの映画館では上映がありませんでした。dアニメストアの配信で視聴。キレイに終わったテレビシリーズの総集編+オマケ、でした。キャッチコピーが「TVシリーズでは描かれなかったもうひとつの結末」だったので、もう少し新規エピソードがあると思っていました。いい話ではあるんですけどね。

劇場版 生徒会役員共2

今年は本作で始まりました。テレビシリーズが好きな人限定の平常運転。これこそ“おさらい”なんて要らないだろうと思いつつ Netflix でテレビシリーズ(41話)をおさらいしてから鑑賞。ちなみにエロネタ満載でPG12にすら指定されているのに、ただのギャグアニメでエロい画は出てきません。

夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者 [Netflix][dアニメストア]

配信で視聴。この作品が好きな人にはよいと思います、という程度。作品自体は嫌いじゃないし、いい話だと思うけれど、それ以上のものではないというか、マンネリ感が強いですね。テレビなら2話分として放送するものだろうし、劇場版クオリティというわけでもありません。

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ [Amazon][Netflix][dアニメストア]

配信で視聴。アマプラでも配信してます。私は、いわゆる「ファーストガンダム逆シャア」オンリーなんですが、これが世間でウケた理由が分かりませんでした。駄作とは言いませんが、なにかおさらいすべきものがあったんですかね。

絶望の怪物 [dアニメストア]

個人が3年かけて作ったというインディーズアニメです。dアニメストアで視聴しました。予告編もあらすじも見なかったので、序盤が少しまどろっこしい感じでしたが、最後まで見られるものでした。作画もストーリーも“プロ”の域には達していないというのが正直なところですが、こういう作品は“個人が3年かけた”というところを含めてのストーリーだと思いますし、見てよかったと思ってます。