ドリパス・劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」復活上映【ネタバレ注意】

ドリパス企画「タムラコータロー監督トークショー付「ジョゼと虎と魚たち」復活上映!!」に参加しました。声優さんの登壇するイベントもよいのですが、監督やスタッフの方が登壇するイベントは、作品そのものを掘り下げるものとなるので、とても楽しいです。なお、作品そのものの個人的評価については「劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」評」に書いています。ハッピーエンドではないらしい原作や実写映画は未見のままです。

登壇されたのはタムラコータロー監督と笠原周造プロデューサーのお二人です。ドリパスは、フラッシュマーケティングのひとつで、上映が終了した作品を映画館で再上映させるというサービスです。作品への投票が増えると上映候補になり、そこでチケットが売れると上映が確定します。本作は、上映が決まってからタムラ監督から笠原Pに連絡して「一瞬でいいから挨拶くらいできないか」と相談して、今回のトークショーが決まったそうです。このため、最初の案内から時間が変更されました。

会場には初見の方もいらっしゃったようで、タムラ監督は「映画館で見てほしい作品なので、来てもらう機会があって来てもらえたことが嬉しい」とおっしゃっていました。この作品はシネスコ(12:5)で作られているためで、それを決めたのはコンテの段階だったそうです。制作のボンズにとっては、以前エウレカセブンで作画用紙の上下を切って疑似的にシネスコにしたことはあったものの、はじめてのちゃんとしたシネスコ作品なのだそうです。

以下、事前にTwitterで集められた質問への答えを、メモ書きをもとに記しておきます。当然ながら本編の重大な【ネタバレ】が含まれます。間違いがあったらすみません。とくに原作未読なので、原作に関する描写が正しくなかったらゴメンナサイ。

Q.冒頭シーンで恒夫と隼人が登場する前の“呼吸音”は誰のもの?
A.恒夫です。

Q.「お姉ちゃん、読んで」と読み聞かせをせがみ、彼女に絵を描くことを仕事にしたいと決意させるきっかけも作ってくれた里緒ちゃんの声は誰
A.中島唯さん。大阪出身の人で、今回は大阪出身の声優さんをたくさん集めました。

Q.田辺聖子先生の原作がある作品ですが、タムラ監督が映像化される時に気を付けた事は?
A.軽やかに描こうとしました。田辺先生は扱うテーマは重くても、大阪弁の妙で軽やかさがある。パラリンピックでもどの部分にハンディがあるということではなく、ストロングポイントを紹介してほしいという話がありました。描写が軽いと言われないよう、軽くではなく軽やかであろうとしました。

Q.舞、隼人、花菜の誕生日は?
A.これは脚本の桑村(さや香)さんに聞いてきました。は8月3日生まれ(獅子座)、O型。隼人は5月27日生まれ(双子座)、B型。花菜は7月14日生まれ(蟹座)、A型です。
※追記。ジョゼは3月3日生まれ(魚座)、AB型。恒夫は1月31日生まれ(水瓶座)、A型です。
※追記。タムラコータロー監督のツイートがあったのでリンクしました。

Q.あきらかに“人魚姫”を意識した作品だと思いますが、他に意識した作品は?
A.“パロディ”はなくしたいと思っていたので、とくにはありません。「おおかみこどもの雨と雪」の助監督をしたときに牛乳瓶に花を生けるシーンの参考に買った牛乳瓶があったので、クローバーを飾るために使いました。

Q.ジョゼが絵を得意にしたきっかけは?
A.原作で雑誌を切り抜いてコラージュを作っていた場面があるので、そこから。

Q.須磨の海岸でダンスさせようと思ったきっかけは?
A.ダンスのつもりはなく、はしゃいでいるつもりでした。説明で、恒夫の足がときどきもつれたりという話をして大城さん(大城勝さん?)から上がってきた原画が結果的にダンスのようになりました。

Q.舞の出身地はどこ?
A.舞は自分の出身地にコンプレックスを持っているという設定なので、そういうコンプレックスを持つ出身地を特定しちゃうのはマズいので、非公開ということにしてください。YouTubeで東北弁の動画はいっぱい見ました

Q.舞が感情的になるときに東北弁になりますが、キャラ設定のときに決まっていましたか?
A.キャラ設定のときに決めていました。舞の女性としての隙のなさは、彼女の努力ありきのものです。(脚本の)桑村さんが乗り移ったようです。
ところが、舞の存在が海外では伝わらないようで、舞は要らないとかコメントがあったのは残念です。
※舞こそが陰の主役だと思っていたので、これはビックリ。

Q.舞が見舞いのときにスカートをはいているのは勝負服ですか? ふだんは足を強調する服装でも、このときにロングスカートだったのは何か意図がありますか?
A.見舞いに行くので落ち着いた服装を選びました。季節感もあります。冬でも足を出してますが。

Q.玄関あがってすぐのところに冷蔵庫があるのはなぜ?
A.台所にも冷蔵庫がありますが、買ったものを台所まで運ぶのが大変なので玄関にもああります。これは美術の金子(雄司)さんが言い出したことで、他人の家には人に見せる前提でないものがあって驚かされることがあるということでした。

Q.恒夫との出会いでジョゼミサイルにしたのはなぜ?
A.地味に始まる作品なので、エンタメを見せたかった。恒夫に受け止めてほしかったという意味も込めています。

Q.二度目のジョゼミサイルについての監督の解釈は?
A.偶然すぎるけど、恒夫がジョゼを受け止め直すということを象徴的に描いています。

Q.エンドロールはEvan Callさんの曲がよくて映像を入れることにしたそうですね。
A.もともとエピローグはシナリオに書かれていました。曲ができ上ってから気分が乗ってきました。ジョゼをクルクルさせるところも本編のバンクだけでなく描き足しています。そこからふくらませました。

Q.大阪メトロとのコラボや聖地マップがありました。いわゆる聖地巡礼についての思いはありますか?(私の質問)
A.当時、大阪は注目されていた時期で、サミットがあったり、渡航者急増ランキングで1位になっていました。マイクロソフトfacebookで1分の動画を紹介していたこともある。古い大阪が取り上げらえることが多いので、今の大阪を描いてみたかった。別に宣伝費をもらっているわけではありません。

Q.ロケハンや取材での思い出はありますか?
A.通天閣の足元にある喫茶ドレミに行ったとき、領収書をもらおうとしたら、店員さんがボンズを知ってました。帰りが夜遅いのでアニメを見ているということでした。でもタムラコータロー監督の作品は知らないみたいでしたね。通天閣はほとんど出てこないのですが、足元が少しだけ出てきます。

Q.大阪で追加したかったシーンはありますか?
A.追加したかったところはないけれど、惜しいと思ったところはあります。御神木が突き刺さっている駅(京阪萱島駅)があるんですが、面白すぎてわざわざ取り上げる理由がありませんでした。

Q.ユキチの性別は?
A.オスです。大阪出身。

Q.監督にとっての虎と魚たちは何?
A.虎は悪意、魚たちは絶望と受け取られているけれど、そうは思っていません。前半は虎は悪意だけど、後半はそうではありません。魚たちも絶望とはとらえていません。そういう暗いタイトルではなく、もっと前向きなものととらえています。

Q.原作には障害者に対する性被害もテーマだったと思います。私はない方がいいとは思いますが、扱わなかった理由は?
A.そこはテーマという主軸ではないと思いました。それがテーマなら、もっと葛藤が生まれるはずだけど、原作にはそういう描写がありません。そういうことを乗り越える、という話ではなかったから、テーマだとは思っていません。
障害者であるジョゼが不自由している描写が足りないと言われることもありましたが、そういう描写をふやすと「かわいそうな子」になってしまいます。そうなると恒夫が同情で付き合ってるようになってしまい、そういう付き合いは長続きしません。そうはしたくなかった。

Q.(司書の)花菜さんは、原案では指輪があったり、婚約者がいる設定だったりしたそうですが、本編の彼女は付き合っている人はいますか?
A.(脚本の)桑村さんには聞いてないですが、恋愛経験はあっても、今はいないという気持ちです。

タムラコータロー監督、笠原周造プロデューサー、ありがとうございました。