2024年日本のアニメ映画ベスト10+α

例によって破壊屋さんの「2024年日本のアニメ映画ベスト10」のためのリスト。(2021年版2022年版2023年版

【総評】
例年に比べると「これぞ!」というようなものがなかった。個人的には“吉田玲子無双”(安心感)と、アニメに限らずリバイバル上映が多かったな、というところ。「映画館に人が入ってない」とも聞いたが、実際、どうなんだろう。なお、2023年を反省して、前売券を全種揃えるとか、入場者特典のために10回以上見る、みたいなヘビーローテーションをやめた(max3回)。劇場アニメの興収がリピーター頼みになってるのも善し悪しと思う。昨今は感染対策が緩く、基礎疾患(糖尿病)持ちとしては出歩いくのがちょっと怖い(かつメンドイ)ということもある。舞台挨拶や先行上映はライブビューイング(LV)があれば、そちらを優先することも多くなった。たいてい当日の気分で入れるくらい空いてるし、カメラでズームアップしてくれる方が老眼にとっては見やすい。そして、こういう機会がそこそこあるのはありがたい。いい時代だねぇ。
ちなみに、去年は映画館で先行上映されるテレビアニメも入れていたが、先行上映会イベントとか、映画館でのイベントLVと区別するのもどうかと思って除外した。(以下の作品リストには残してある)

※2024年の劇場アニメ全作品のリストはこちら→ AnimeMovie2024.xlsx ※2024/12/19 X/Twitterハッシュタグリンクを修正しました。
※HTML形式にしました→ animemovie2024.html

がんばっていきまっしょい
②数分間のエールを
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編
④きみの色
⑤ルックバック
⑥クラユカバ
⑦クラメルカガリ
⑧ふれる。
傷物語 -こよみヴァンプ-
⑩ぼっち・ざ・ろっく Re:
⑪ぼっち・ざ・ろっく Re:Re:
⑫トラペジウム
⑬化け猫あんずちゃん
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章
⑮大室家 dear sisters
⑯大室家 dear friends
さらば宇宙戦艦ヤマト
⑱五等分の花嫁*
⑲藍の約束(自主制作アニメ)
⑳好きでも嫌いなあまのじゃく
㉑BLOODY ESCAPE

以下、多少のネタバレを含むレビュー。

 

がんばっていきまっしょい

かつて酷評した「あした世界が終わるとしても」(あしせか)の櫻木優平監督作品である。実のところ、再び監督をする機会があるとは思っていなかった(←オイ)。「あしせか」が酷かったのは開始15分で明かされる設定だが、今回は原作モノである。(原作もドラマも知らなかったが)どんな風に料理されるのか興味がわくというものだ。
とても良かった。ちょっと期待はしていたのだ。冒頭で「脚本 櫻木優平」と出たときに、少しばかり「あしせか」の不安がよぎったけれど、奇をてらわない等身大の青春映画だった。高校のトップとか世界のトップを目指すような“スポ根”ものでもなく、地方の競技会が舞台というのもよいのだろう。こういう人との出会いで人が変わっていくというストーリーが大好物なのだ。本作はそんなに大仕掛けなストーリーではないけれど、リアルな高校生を描いたという感じの良作だと思う。スマホがキーポイントになってるから、それなりに脚色を入れているのだと思うけれど、主人公の葛藤やヒメの役割、二宮の関わり方など、踏み込み方、抑え方がいい感じだった。
他のCG作品に比べて見劣りするというような評価も見たが(MMDっぽいのは事実)、櫻木監督が4か月だか半年だか一人でコツコツ修正してたというだけあって、表情や動きの細かく作り込まれた感じはある。とある音楽映画でモーションキャプチャを雑に作画してたことを思えば……(←ヤメナサイ)。ただ、CGアニメにありがちな“これでもか”という動きは要らないと思ったのと、微妙にローアングルが多かったり、スカートの中が丁寧に描写されていたりというのは気になった。そういうのは、さりげなく出てくるくらいでいいんだよ。
でも、いい作品を見せてもらいました。興行的には厳しかったみたいだけど、櫻木監督の次回作には期待してます。
……と書いた後で、原作を読んだ(実写ドラマ・映画は未見)。これ、原作というより原案なんじゃないの?というくらいストーリーは違っていたが、原作のエッセンスを残しつつ現代劇に昇華させたものになっているのだと思う。このあたりは4年前の「ジョゼと虎と魚たち」にも感じたところである。

数分間のエールを

面白かった。正直、「がんばっていきまっしょい」とどちらをトップにするか迷ったし、見た時の印象は、こちらの方がよかったかもしれないと思うけれど1時間強の中編というところを少し割り引いた。実際、やや短めの尺なので複雑なストーリーではないけれど、ミュージックビデオをテーマにした“エールを送る”作品。王道といえば王道だけれど、それだけ余計な不安感もなく見られる。前向きになれる。公開が個人的に忙しい時期だったのと、小品と思ってちょっと時間をおいて鑑賞したら、パンフレットが手に入らなかった。(←中古で入手)

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編

キャラデザとキービジュアルから子供向けなのかと思って見送るつもりだったけど、予告編にちょっと惹かれたことや故TARAKOさんが出演していること、脚本が吉田玲子さんだというところで鑑賞。前編なので消化しきれていないところもあるし、後編の上映が延びたことで「前編の内容を覚えていられるか」は気になったけれど、これがなかなかの良作だった(と、この時点では思っていた)。グッズ売りに精を出すようなキャラデザでもないだろうが、劇場グッズに加えて、たまたま出かけた先にあった POP UP SHOP でも買い物してしまった。後編は下記の通り。

きみの色

京アニでヒット作を連発していた山田尚子監督作品。実は、今年一番期待していた。以前のように前売券を爆買いするのはやめたけど、それでも3枚買ったほど。結果、よくなかったとは言わないが、ツッコミどころがいろいろあって感情移入しきれなかった共感覚を持ち込んだのは興味深いところだけど、変に見られないように秘密にしてるというわりに、誰が何の色だとかベラベラよく喋っていた。設定おかしくない? これも吉田玲子さんの脚本だそうで、面白い部分はそのあたりにあるのだと思うけれど、退学に必要なハンコを母親が押すという描写があったのを山田監督がカットしたらしい。えぇぇ、そういうところカットしちゃうんだ。ルイときみちゃんの恋愛感情も秘めすぎというか、久々に会ったからって、どさくさに紛れて抱きしめるとか、なんか“そうじゃない”感じ。期待値が高かった反面、ということはあると思うけど、期待通りだったとは言いにくい。

ルックバック

正直、これは評価が難しい。良作じゃない、とは言わない。ストーリーはよく考えられているし、映像も丁寧に作られていた。好きな人がいるのも分かる。ただ、原作コミックが公開されたときの「こんなに早く京アニ事件をモチーフにしちゃうのか」といってドン引きした気持ちをなくすことはできない。そして、それを差し置いても、結局、2人にはあまり救いがないわけで絶賛しにくい。好きかどうかでいえば、好きじゃない作品。アマプラで配信されるというので見ようと思っていたけど、なかなか気が向かない。

クラユカバ

もともと個人制作の人でクラウドファンディングもやっていて大正ロマンっぽいビジュアルで、黒沢ともよさんがCVやってなければ見送っていたくらいのものだけど、普通に面白かった。そもそも個人制作レベルと思っていたので映像にはそんなに期待していなかったのだが、ツインエンジンが制作してて“まともな作り”だった。インディーズじゃないじゃん、って感じ。知らんけど。年を取ってきたので約60分と短いのもありがたいくらい。ただ、大正ロマンというテーマ自体が個人的な趣味でないのと、鑑賞後にあまり心に残るものがなかったということで、この位置。商業的な成果がどうだったのか知らないけど、(これも長編の類らしいけれど)塚原重義監督、今後、普通の長編アニメを任されることになっても不思議はないと思う。期待してます。

クラメルカガリ

「クラユカバ」を制作するための条件として課せられたという作品。「クラユカバ」と同じ世界観で描かれるスピンオフ。「クラユカバ」のクラウドファンディングに、かねて塚原重義監督作品のファンだったという成田良悟氏が参加していて、リターンとして短編(※)を書いてもらったのがきっかけで制作されたんだそうな。テーマ曲がオーイシマサヨシさんなのも好感。
※「120ページは短編です」(成田良悟氏談)

ふれる。

秩父三部作(「あの花」「ここさけ」「空青」)を手掛けた監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、キャラクターデザイン:田中将賀が組んだ、という触れ込みの新作。でも、この三人が組んだ最高傑作は「とらドラ!」だと思う
閑話休題
架空の生き物(ふれる)によって言葉を使わずにコミュニケーションが取れる、という設定に惹かれないし、そもそもキービジュアルが男三人組で見送ろうと思うところだが、この座組みなので義務感で鑑賞。キービジュアルからBL狙いとも噂されたが、そういう要素はなく、せいぜい腐女子狙いというところか。「『グッバイ、ドングリーズ!』よりはマシであれ」という心配は杞憂だったという程度には、ちゃんとしたストーリーだと思うけれど、設定におんぶにだっこという感じであまり感情移入はできなかった。「ふれるの本当の能力」は、昨今のSNSを見ての話かもしれないが。
岡田麿里さん、ファンタジー設定のない作品を書いてくれないかなあ。

傷物語 -こよみヴァンプ-

かつての傷物語3部作を1作にまとめた作品。面白いことは面白いんだけど、やはり最初から1作にまとめてほしかった

ぼっち・ざ・ろっく Re:

テレビアニメの傑作を総集編として前後編の2作に分けた1作目。テレビアニメがよくできているから、前後編という形であまり端折っていない総集編としても面白いんだけど、総集編の例にもれず「テレビアニメの方がいい」としか。

ぼっち・ざ・ろっく Re:Re:

前編と同じで「テレビアニメの方がいい」なんだけど、後編の最後が衝撃だった。エンドロールを見るまで(イントロを聞くまで)「Re:Re:」がアジカンの曲だということを忘れていた。この曲は、「僕だけがいない街」というテレビアニメのオープニングで使われていた曲でもある。えぇぇ、いい曲だからって、タイトルがぴったりだからって、別のアニメのテーマ曲を締めくくりで使っちゃうんだ。「僕だけがいない街」は好きな作品だったのに、この曲はもう“ぼざろ総集編のテーマ曲”として扱われてしまうのだろう。いや、こちらは「Performed by 結束バンド」ではあるんだろうけどさ。

トラペジウム

つまらなくはない。CloverWorksのアニメはさすがだと思うけれど、あくまで小品。誰かしらのファンじゃないなら見送っても惜しくはないと思う。キービジュアルで宗教映画かな?と思ったけれど、そんなことはなかった。CloverWorks渾身のアニメという感じで映像はよくできていた。どこまでがCGで、どこまでが手描きなのか分かる人には分かるのかもしれないが、ダンスシーンなんかは見てて気持ちよいくらい。
【ネタバレ注意】
アイドルグループとしてデビューするのが主人公の“たくらみ”という、ちょっと突拍子もない設定。よくこんな設定でアニメを作ろうと思ったな、原作者が元アイドルだから売れると思ったのか?とさえ感じられる。作品でアイドルグループに巻き込まれていく人たちも、そんな都合よく乗せられるわけないじゃん、人前に出たくないだろうクルミまで熱心に練習しているのは流されすぎ、という不自然さがぬぐいきれない。やってることがプロデューサーというか、アイドルマスターかよ。そして、そういう悪意(あるいは狂気)に対するしっぺ返しがない。いや、ないことはないのかもしれないが、あっさり解決する。ボランティアからテレビ出演を狙って、実現したとたんボランティアをやめちゃうって、評判を気にしてる人のやり口じゃないよね。終盤にかけてちゃんと伏線が回収されていくけれど、そう思うと取ってつけた感じがしてしまい、感動の大団円という気分になれなかった。
まあ、でも珍しいものを見せてもらった気はするし、ありきたりのストーリーというわけじゃないのはたしか。

化け猫あんずちゃん

キャラデザがユニークなのと、実写を撮影してロトスコープとか手間がかかっていそうだったのでタレント声優に目をつぶれるくらいには期待していた作品。意外と肩透かしだった
【ネタバレ注意】
アニメオリジナルだという「かりん」を“いい子”に設定しなかったのは現代的なリアリティを求めたのだろうか。しかし、いきなり小遣い使いこむとか色々やりすぎて、応援する気持ちが生まれない。お母さんに会いに行く先が地獄というので、実は悪いことしてた人なのかと思ったところであの展開。そういう人材の居場所があるのかと思った矢先にあんなことになってしまい戻るのに「覚悟はできてる」みたいな流れってことは、それこそお母さん、この先“地獄の責め苦”を味わうことが確定しちゃったんじゃないだろうか。お祭りしてた人たちも、時間をかけて準備していたであろう人たちも、台無しにされてしまって、それっきりである。もとからそういう作品ということなのだろうけど、作品を通じて誰も成長していない

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章

前章がよいと思って絶賛していたんだけど、後編はそんな形で発散しちゃうのか、という印象が強くてちょっと引いた。見直したら印象変わるのかもしれないけど、なんだか残念。配信サービスで、結末が違う18話モノが見られるんだけど、見ていない。

大室家 dear sisters

ゆるゆり」のスピンオフ。ほのぼのした話で、特別すごい作品ではないが、無難な話でまとめている。まあ、完全にファン向けの作品で、テレビ放送で見たらそれでおしまいだったとは思う。実際、本編40分くらいなので、もう一つの作品(dear friends)と合わせて80分くらいなら、1本の作品でまとめてほしいところではあるが、通常の映画作品ではなく「ODS(Other Digital Stuff)」という形にするのが最近のトレンドらしい。

大室家 dear friends

ゆるゆり」のスピンオフPart2。だからどうというような話でもない程度の日常。

さらば宇宙戦艦ヤマト

宇宙戦艦ヤマト」とともに4Kリマスター。見たのははるか昔……と思っていたけど、たぶん私が見たのは劇場公開後に放送されたテレビシリーズで、劇場版は見たことがなかった、ということが分かった。「宇宙戦艦ヤマト」がテレビシリーズを編集して微妙に無理があると思っていただけに、最初から劇場版として作られたものでもあり、そこそこ良作だった。

五等分の花嫁*

テレビシリーズが1期、2期と続いた後、劇場版で完結したと思いきや、途中ではしょった話を「∽」(スペシャル)として制作して、そういうのテレビシリーズでやっとけやと思ったところで、今度は「*」(オハナ)。完結した劇場版の続編ができるということで、ビジネスとして引っ張るのもいい加減にしろと思うところだが、一応、見てみないと批判もできないと思うので見てみた。
いや、なんだその無理やりな展開は。何か裏があるのかと思ったけど、テレビシリーズ2話分くらいの時間しかないので、そんなわけもなく、ホントにビジネスを引っ張っているだけみたいだった。もうちょっとなんか考えられなかったのか。

藍の約束(自主制作アニメ)

劇場上映はされていないので、扱いとしては番外編。クラウドファンディングで100万円超を集めていた16分程度の作品。あくまでアマチュア作品という感じではあるんだけど、声優が豊崎愛生さんと雨宮天さんで、主題歌がこはならむさんというのがビックリ。人脈なのか? 映像はアマチュアっぽい感じがそこかしこに見られるけれど、ストーリーは順当。

好きでも嫌いなあまのじゃく

柴山智隆監督の前作「泣きたい私は猫をかぶる」は良作だったし、その雰囲気を受け継いだ新作。「泣き猫」はコロナの不運にみまわれたところをNetflixに救われたのをきっかけに「雨を告げる漂流団地」と本作も制作することになったようだけど、結果としては、どちらも不満の残る作品だった。アンチ・ポリコレなのかもしれないが、神社に連れて行くのに“家出”する必要はないよね。

BLOODY ESCAPE

実は前年のうちに先行プレミア上映で鑑賞していて「こりゃ2024年の最下位確定だな」と思った作品。その通りになった。
もとは「エスタブライフ グレイトエスケープ」というテレビシリーズを受け継いだ続編として制作されるはずだったのは劇場版「エスタブライフ」。「コードギアス」の谷口悟朗作品かつポリゴンピクチュアズ制作だからと、テレビ版も見ておくつもりだったのにあまりの設定のぶっ飛び具合に3話くらいで挫折……というのを2回くらい繰り返した。テレビ版の放送が終わっても、いっこうに劇場版の情報がやってこない中、ようやくやってきたのがこの「BLOODY ESCAPE」である。ああ、これは(おそらく)本放送の直後に再放送までしたテレビ版の反応が悪すぎて、仕切り直しになったんだろうと思い、これでテレビ版をおさらいする必要もなくなったかな、と思っていた。

ところが、どうやらテレビ版のキャラもしっかり登場するという話だったので、意を決してアマプラで配信されていた「エスタブライフ」を視聴。3話を超えて、4話、5話とツッコミどころだらけの展開で、これをよくプッシュし続けたなと感心するくらい。一応、8話はちょっとよかったんだが、そこまで。「逃げるというネガティブな行為をポジティブに捉えてみたい」みたいな話だったので、それはそれで面白い着眼点かと感じていたのだが、話の転がし方が不自然すぎた。「終末トレイン」といい、なんで地域を離れ離れにしてしまうのか。

そして、本作「BLOODY ESCAPE」については、「テレビ版のキャラが出てくる」どころか、設定がそのまま受け継がれていた。とはいえ、「改造人間」×「吸血鬼」×「ヤクザ」なんて設定のどこに魅力が持てそうと思ったのかさっぱり分からない、と懸念していた通り、ちょっと納得しがたいストーリー展開だった。「谷口監督らしい作品」と喜んでるツイートも見かけたけれど、マジですか。ちなみに、先行プレミア上映に申し込んでしばらく、ずっと座席がガラガラだったのに数日前になって急に埋まったと思ったら、どうやら関係者の動員があったみたいで、封切られた後も私が見た映画館ではグッズがクリアファイルしか置いてなかったレベル。どこかで止めるわけにはいかなかったのかなあ。これでゲームも制作される予定だった……のだが、公式サイトもXアカウントも早々になくなっていた。これはもう、谷口監督の黒歴史になってる気がする。