「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」にツッコんでみる

以下では、「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」のテレビシリーズ、劇場版双方の【重大なネタバレ】を含んでいます。また、原作小説は読んでいません。あらかじめ、ご了承ください。

一応お断りしておくと、基本的には良作だと思っています。実のところ、ヴァイオレットの天然っぷりが性に合わないとか色々あるのですが、テレビシリーズのエピソードを絶妙に劇場版につながっていて、それをもってテレビシリーズを知らない初見の人にも、おおまかな設定が理解できるようになっているのだと、先日気付きました。ただ、「感動作」といわれる本編よりも、事件以降、京都アニメーションが前に進むため、全員でヴァイオレットに取り組んできたこと。そして、遅れてようやく上映にこぎつけられそうというところでの新型コロナという不運に見舞われ、京都アニメーションのどの作品よりも時間をかけることになったという経緯こそ、心穏やかには鑑賞できないという面があります。しかし、この「劇場版」、どうにも気になるところがあるので、ちょっと書き残しておこうと思います。










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VioletEvergarden










気になるところと言っても、おばあちゃんの大事な手紙を風に飛ばしてぼーっとしてるなよとか、ヴァイオレットは郵便社に入った頃におそらく14歳だったというなら、戦争当時はそれより若かったわけで、そんな子供に愛を語るとか少佐は普通にロリコンなんじゃないかとか、ユリスからの依頼が郵便社を通していないなら闇営業になるんじゃないかとか、そもそもあの義手の謎技術をヴァイオレットが使えて少佐は使えなかったのはなぜかとか、そういうことではありません。まあ、ロリコン疑惑はテレビシリーズに心からのめりこめない一因ではあったのですが、そこは今回の本題ではありません。

劇場版の冒頭で亡くなっているデイジーのおばあちゃん(アン・マグノリア)は、テレビシリーズ10話に出てきた子供です。アンが8歳になる前に母親(デイジーの曾祖母、クラーラ・マグノリア)が若くして病死するけれど、その死後50年にわたって誕生日に渡す手紙を書き残す、というのが10話のあらすじです。すべての中でも最高のエピソードで、劇場版にうまくつながれていましたが、つまりアンは8歳から57歳まで手紙を受け取っているわけです。

10話のエンディングでは、アンは18歳のときに告白されたらしく、さらに20歳のときに子供ができたことが示されています。この子供がデイジー母(名前は不明)でしょう。兄弟姉妹がいた描写はないですし、アンとデイジー母だけで仲良く写真に収まっていますから、デイジー母は一人っ子だったと思われます。デイジーも一人っ子のようですが、さて、デイジー母は何歳でデイジーを生んだのでしょうか。ヴァイオレットの時代とデイジーの時代で何年ほどの差があるか分からないのですが、およそ60年という考察を見かけました。どこかで言及されているのでしょうか。もし、そうだとすると、アンが8歳(以下)というのがヴァイオレットの時代ですから、アンが68歳になっているのがデイジーの時代です。そうなるとデイジー母は48歳、デイジーが何歳か分からないですが、20歳だとすると11年前(つまり9歳のとき)までは、アンは手紙を受け取っていたことになります。

アンは、デイジー母(およびデイジー父)には手紙のことを話していたわけですが、デイジーには話をしなかったのでしょうか。デイジーは、おばちゃんが死んだときに手紙のことを初めて知った、みたいな流れになっていましたが、9歳くらいだと物心がつくどころではなく色々覚えているものです。少しくらい年齢はずれるかもしれませんが、この時代背景で30歳を超えた高齢出産ということもなさそうな気がします。それこそヴァイオレットとデイジーの年代差がもっと少なければ、つい最近まで手紙が届いていたはずです。「すぐに誰もいなくなったら、おばあちゃんかわいそう」と言うほど、おばあちゃんっ子っぽい描写があるのに、なんで今まで知らされていなかったのか、という気になります。

そもそも50年間手紙を送り続けていたC.H郵便社は、いつドール(代筆業)をやめたのでしょう。代筆業をやめても、引き継いだ会社が義務として手紙を送り続けたということはあるかもしれませんが、ヴァイオレットが18歳でライデンを去った頃から高々60年程度しか経っていないのなら「当時の人はこの世に誰も残っていない」という状況ではなさそうです。なにしろ博物館で案内していた人は、ヴァイオレットが郵便社に来た時(1話、ヴァイオレットは14歳くらい)に受付をしていた人(ネリネ)です。デイジーが最後に立ち寄った郵便局も「昔はドールが……」と語っていましたが、そもそもヴァイオレットは亡くなっていて当然のような昔の人、ということはなさそうです。少佐とヴァイオレットの間に子供はできなかったのか、というのも気になります。もちろん、あの場に年を取ったヴァイオレットが出てきたら興醒めでしょうけれど。

2020/11/22追記
2020/11/12に「スタッフトーク付き上映会」に参加することができ、その際に何度か「60年後」という言葉が聞かれました。ヴァイオレットの時代とデイジーの時代は60年の差があるというのが公式設定のようです。

2020/11/26追記
10回鑑賞記念で、もう少しツッコんでおきます。
エカルテ島で迎えた朝、平和な島のようすが描写されていますが、その中に小さな赤ん坊を背負ったお母さんがいます。年よりと女と子供を残して男は皆戦争から帰ってこなかったのなら、その子のお父さんは誰?
エカルテ島で嵐の夜に帰ろうとするヴァイオレットは「朝にならないと船も出ない」と言われます。ということは朝には船が出るのに、ヴァイオレットたちが帰るために乗った船は夕方の出発。前夜は一刻も早く帰ろうとしていたはずなのに、結局、観光してたってことですかね。そもそも宿もない島に、1日2便(以上)も、あんな大きな船が立ち寄るんですね。
そして、ヴァイオレットたちの乗った船が出発した後に登場するディートフリート大佐。あの時間より遅い時間にも帰る船があるんでしょうか。それともギルベルトの家に泊めてもらうつもりだったのでしょうか。でも、船から戻ってきたヴァイオレットが泊まるなら、完全にお邪魔虫ですよね。