「カメラを止めるな!」公開100日おめでとう!!【ネタバレ注意】

※重要な注意 以下では「カメラを止めるな!」およびいくつかの映画のネタバレを含みます。

今日(2018/9/30)で公開100日目となる「カメラを止めるな!」の人気が続いている。すでに鑑賞済の人向けに書いているので、説明は必要ないだろうが、ユニークで面白い。“三谷幸喜がやりそう”という論評があったけれど、実際、こちらの記事によれば「ショウ・マスト・ゴー・オン」という三谷幸喜の舞台に影響を受けたとある。私が思い出したのは「ラヂオの時間」だ。たしか三谷幸喜は尊敬するビリー・ワイルダーに「ラヂオの時間」を見てもらう機会があり、「素晴らしい。コメディはまだ死んでない」と褒められたはず。そういう意味で、「カメラを止めるな!」をワイルダー監督に見てもらいかった(←故人です)。

話がそれた。「ラヂオの時間」の題材はラジオの生放送で、“生放送だからこそ起きるトラブル”というのをこれでもか、というくらいに盛り込んでいる傑作だ。「カメラを止めるな!」を見たとき、これは「ラヂオの時間」くらいの興収いくんじゃないのか、と思ったが、wikipedia を見たら「ラヂオの時間」は興収4億円で、「カメラを止めるな!」はすでに23億円を超えているらしい。すごいな、それ。

話がそれた。「カメラを止めるな!」も生放送で起きるトラブルが題材になっているが、それを“放送そのもの”と“撮影の舞台裏”という二部構成にしているので「ラヂオの時間」とは別の面白さになっている。放送と舞台裏を混在させていたら、この面白さはなかっただろう。むしろ、ジャッキー・チェン映画のエンドロールに出てくる“NG集”が延々続くような面白さという印象もある。もっともあれはホントのNGなので、わざわざNGを作り出しているピクサーのアニメ映画の方が近いかもしれない。

話がそれた。「カメラを止めるな!」の最初の37分ワンカットと言われてる部分は、本当のワンカットじゃないよね。ちょこちょこインタビューなどを見てても、そこには触れてはいけないような感じというか、「ワンカットで撮影(という設定)」のカッコが取れて説明されている印象があるんだけど、それならワンカットかどうか疑われるような撮り方はしないと思うので、ワンカットではないと思う。本当にワンカットで撮影した長編作品としては、やはり三谷幸督の「大空港2013」というのがある(amazon プライムビデオにある)。映画というより WOWOW 向けのテレビドラマだけど、こちらも良作。

話がそれた。「カメラを止めるな!」が印象的だったのは、そのアイデアだけでなく、映画としての完成度が高いことだ。低予算で済んでいるというのは、そもそも低予算で作っている設定でクリアしているにしても、それこそ大作映画とかお金がかかっているであろうテレビドラマでも、なぜだか大根役者みたいな演技が見受けられたりするのに、そういう部分がない。意図的に大根役者っぽい演技を見せている部分はあるのだけど、そういう細かい部分まで行き届いた感じがする。あれで(研究だから)俳優費用がゼロとかビックリ。「白昼夢」というフジテレビの番組で短いワンカット作品を作るようすが放送されていたけど、上田慎一郎監督が丁寧に演技指導していたので、そういうところが作品にあらわれているのだと思う。アニメ映画でプロの声優を使わず芸能人に棒読みさせることでポストジブリをうたい“大作感”をアピールするケースが多いことに比べると対照的である。

無理やり話をそらすなよ。「カメラを止めるな!」で好きなシーン。放送パートでカメラが地面に置かれて動かない部分がある。舞台裏パートになると、カメラマンが腰痛であること、“撮影してみたい”助手がいるというので、ああ、あそこでカメラマンが変わるんだろうな、という伏線だということが誰にも分かる。実際、その通りになるのだが、その場面を監督の娘が見て「カメラマン代わった?」と一言発する。この一言で、助手がダサい撮り方を好んでいるという伏線を回収した上で、映像制作にかかわる娘が優秀であることを想起させる。いいシーンは、他にもたくさんあるけれど、こうした一瞬で色んな背景がパッと広がる場面が大好物なのだ。

海外でも上映されて人気が出ていると聞くけれど、少し前にはアメリカは映画祭に出るだけで上映予定がないということだった。その映画祭をきっかけにアメリカ上陸もあるかもしれないらしい。大ヒットしないかなあ。アメリカで興行収入の一番多かった邦画って、いまだにポケモン(1作目)なんだよね。(また話がそれた^_^;)