事後対処

ノーティス・アンド・テイクダウン

著作権侵害などの問題に関連して、プロバイダー責任制限法で言われる「ノーティス・アンド・テイクダウン(notice and take-down、通知後の削除)」というのは、「問題が発生したときに、発生後に通知があってから対処すれば、事前の対処をしなくても責任を問われない」というものだ。これを、「事後に対処するかしないか」という話だと勘違いしている人がいて驚いたことがあるが、問題が発生したら対処するに決まっているわけで、事後の対処させしっかりしていれば、事前に取らなくても責任は問わないよ、ということである*1

これがテレビだったら、放送する内容を事前にチェックするだろうし、生放送で、出演者(たとえ一般人であっても)が不適切な発言なり、表現をしたら、お詫びするなり、場合によっては BPO に報告したり、ということになるだろう*2

宇多田ヒカルの公式動画削除“事件”

宇多田ヒカルさんの公式動画がYouTubeから消える」などで報じられたとおり、先日取り上げた宇多田ヒカルのプロモーションビデオが YouTube から削除されるという事件が起きたのだが、これにつけられた はてブのコメント がけっこうひどいものだった。たしかに、“間違って”削除されたことは残念ではあるし、宇多田さんが嘆くのも無理はないと思うのだが、その背後にある理由は膨大な削除作業だろうことが推察される。プロバイダー責任制限法に守られたプロバイダーに「ノーティス」するために、無許可でアップロードされたコンテンツを探すという地味な作業をする人たちがいるのだ。はっきり言ってつまらない仕事だと思う。著名アーティストの PV がフルコーラスでアップされることは(たぶん)珍しいので、たまたま間違えてしまったのだろうが、それに対して、そんなに罵詈雑言浴びせてどうするんだろう?

そんな間違いも許せない態度で、フェアユースだのを認めないのはおかしいって言うのって、それこそ理解してもらえないんじゃないだろうか。権利者側にしてみれば、仕事が増えただけで何のメリットもないわけで*3、「チェック体制持てよ」「責任負えよ」という話だって出てくるのではないか*4

とりあえず、公式動画は、時間がかかると言われた割には当日のうちに復旧したようであるし、類稀なる才能を鑑賞しつつ頭を冷やしてみたらどうだろう。

*1:それは、問題を発生させることを前提にした仕組みから責任を逃れさせるものではないけれど。

*2:だから、勝手に暴走するリスクのある一般人よりも、お笑い芸人の方が選ばれやすいという傾向にもなっている。

*3:ここで宣伝効果云々という人は、引っ込んでてね。

*4:そうすべきだ、という話ではなく。