コマーシャルを差し替えるテレビ

Google TV と米地上波テレビ局

少し前に話題になった "Google TV" だが、ソニーから実機が出たばかりのところで、地上波テレビ局から締め出しを食らっているらしい*1。日本のテレビ局はケチだの、チャレンジ精神がないだのと言っていた人たちは、こうして締め出したテレビ局のことをどう伝えているのだろうか。テレビ放送はタダなんだから視聴者が好きにしていいなんていう、まあ「そんなわけないじゃん」という話が露呈したようなものだと思うのだが。

テレビ/チューナーの新たなビジネスモデル(笑)

かつて地デジ対策の切り札だと言って*2、どこかに書いたんだけれど*3、ネット接続できるテレビやチューナーを開発して、そこでコマーシャルを差し替えてしまうという仕掛けを考えたことがある。具体的には、番組中は地上波を流すだけだが、コマーシャルになったら自動的にテレビメーカーが用意したコマーシャルに差し替えてしまうのだ。コマーシャルの判別が難しいかもしれないが、メーカー側で実際にテレビを見ながら切り替える人がいてもよい。今でもデジタル放送でいくらかタイムラグが生じているくらいだから、少しバッファリングした上で、サーバーと接続して差し替えるタイミングなどを受信すれば、そこそこスムーズに切り替えられるのではないか。人手をかけたとしても、別に一日中やる必要はなくて、お金になりそうなプライムタイムの4〜5時間だけやっていればいい。あるいは、人手をかけずにコマーシャルをカットするスーパーマシンを開発するのでもいい。ネットでつながっていれば個々のテレビやチューナーに搭載する必要はない。まあ絵空事なので、技術を細かく論じてもしかたがないが。

そうすれば、テレビやチューナーメーカーには、新たなビジネスチャンスが生まれる。プライムタイムにコマーシャルを流すチャンスが生まれれば、テレビやチューナーを原価割れして、あるいは無料で提供できる。もちろん差し替え機能を禁止することはできない。あるいはデジタルレコーダーのような付加価値を付けて安価に提供してもよいし、システムをテレビメーカーに“お金を払って”組み込んでもらってもよい。そうして市場を席巻していければ、東京キー局のような莫大な収入を恒常的に得ることだって夢ではない*4

違法性はあるのか

もちろん、“モラル”としては大問題だろうが、そのようなテレビやチューナーが登場したとして、どんな法律に触れるのだろう。不正競争防止法あたりが気になるけれど、直接該当する条文がわからない。コマーシャルは地上波の命綱だから、かつて録画機でのコマーシャルカットも問題視された。「コマーシャルカットは同一性保持権の侵害だ」と主張して笑われたテレビ局の社長もいたが、もちろん違法とはみなされなかった。たんに“他人の褌でビジネスをする”ことが違法扱いされたら、プリンターの互換インクやら、非公認アクセサリーが違法ということになってしまう。

ビジネスモデルは変わる

そして、じわじわとテレビ局の広告収入がテレビ/チューナーメーカーのコマーシャルに吸い取られていく。メーカーはハードを頒布するコストは負担するが、あとは広告を取ってくればよい。いや、広告を取ってくるのは広告代理店に任せてもよい。広告場所さえ確保すれば、電通でも博報堂でも寄ってくるだろう。ネットにつながっていれば正確な視聴数や傾向も蓄積できるから広告主は喜ぶはずだ。そのうち「テレビ局には売り上げの一部を分配してあげよう」なんて話が出るかもしれない。テレビ局は面白い番組さえ作ってくれればよい。電波だから締め出しなんてできるわけがないのだし、ビジネスは変化するものだ。既得権が維持できると考えている方がおかしい。

……なんて話になったら、テレビ局が怒って当然のような気はしないかな。今は、その中間にいるだけだと思うんだが。

*1:Google TV、一部番組のストリーミングがブロックされる--WSJ報道」などの報道による。

*2:冗談で。

*3:どこに書いたかわからなくなってしまったが。

*4:もちろん実際には夢物語だが。