新型コロナ: 日本のPCR検査は足りなかったのか

オルタナティブブログに新型コロナについて最初に投稿したのが「新型コロナ: 日本のPCR検査は足りないのか」(移行後)というトピックでした。もう1年半も前のことですが、いまだに「感染を抑えこむためには大規模検査が必要だ」という人がいるのは不思議でなりません。

偽陽性偽陰性
実際には感染していないのに陽性と判断されてしまう偽陽性については、当時から専門家の方々の発言もあったわけですが、5%は過大であるという指摘はありましたし、その後に訂正した1%もやはり過大だったことは否めません。パンデミックの発端となった武漢では、感染が落ち着いた後に1000万人近い市民に対する検査で300人の無症状感染者がいたと報じられています。全員が偽陽性だとしても、わずか0.003%にすぎません。(※NHKの記事には“PCR検査”とは書かれていませんが、時事通信の記事には明記されていました)

一方、感染しているのに陰性と判断されてしまう偽陰性は有意に存在します。忽那賢志氏が引用していた論文によれば、発症前は検出されにくく、発症直後が検出されやすく、ふたたび検出されにくくなっていきます。

このことから「PCR検査の結果が陽性なら感染していることはほぼ間違いない」、一方で「PCR検査の結果が陰性でも感染していないとは限らない」ことが分かります。このような特性を考えると、「陽性の場合に隔離する」検査には意味がありますが、「検査が陰性だから安心する」検査には意味がありません

PCR検査は足りなかったのか
感染初期から大量の検査を実施していたと言われる韓国は、もともとMERSの経験から行政がパンデミックへの対策を講じてきました。しかし、日本は無駄を省けと効率を追求してきたため、十分な検査体制がありませんでした。数理モデルによる分析で「新型コロナの感染者で、他人に感染させているのは2割」と判明したことから、限られた検査リソースを「感染させる2割を疫学的に追いかけてクラスターを防ぐ」ことに集中させたのです。

「日本の対策が成功していたように見えたのは、少ない検査で大量の見逃しがあったから」という指摘は、厚生労働省による大規模抗体検査によって否定されました。昨年6月の調査では「東京0.10%、大阪0.17%、宮城0.03%」という結果になり、12月の調査でも「東京都1.35%、大阪府0.69%、宮城県0.14%、愛知県0.71%、福岡県0.42%」という結果でした。「検査が足りなくて感染が広がった」という指摘はあたりません

これは、尾身茂氏が国会で答弁していたことでもありますが、検査抑制論とは本来「無駄な検査をしない」ことであって「検査のキャパを増やさない」ことではありません。検査抑制論を批判する人たちは、しばしば(場合によっては意図的に)後者は問題だと批判するのですが、そういう認識ではいつまでも議論のすれ違いが起きるだけです。

大規模検査をしようとした広島では予備費の10億円をつぎ込んだそうですが、周囲の県に比べて目立って感染者が抑え込まれたという実績にはつながっていません。感染初期に比べればずいぶん民間検査所が増えましたが、「検査して安心したい」という目的で検査している限り、あまり意味はありません。

日本が第一波で感染の広がりを抑えることに成功したのは、早くかつ強く自粛したためです。何度も書いたことですが、検査はワクチンや薬の代わりにはなりません。ワクチンが登場する前は、感染対策に必要なのは自粛以外にありませんでした。少なくとも当時に限れば、大量に検査した欧米に比べても、日本の対策が成功だったことは疑う余地がなく、検査は足りていたという他はありません。なにより、第5波と呼ばれる今年7月以降の感染拡大こそが「放置すれば感染は拡大していたが、自粛したことで抑え込まれていた」ことを実証しています。

ドリパス・劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」復活上映【ネタバレ注意】

ドリパス企画「タムラコータロー監督トークショー付「ジョゼと虎と魚たち」復活上映!!」に参加しました。声優さんの登壇するイベントもよいのですが、監督やスタッフの方が登壇するイベントは、作品そのものを掘り下げるものとなるので、とても楽しいです。なお、作品そのものの個人的評価については「劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」評」に書いています。ハッピーエンドではないらしい原作や実写映画は未見のままです。

登壇されたのはタムラコータロー監督と笠原周造プロデューサーのお二人です。ドリパスは、フラッシュマーケティングのひとつで、上映が終了した作品を映画館で再上映させるというサービスです。作品への投票が増えると上映候補になり、そこでチケットが売れると上映が確定します。本作は、上映が決まってからタムラ監督から笠原Pに連絡して「一瞬でいいから挨拶くらいできないか」と相談して、今回のトークショーが決まったそうです。このため、最初の案内から時間が変更されました。

会場には初見の方もいらっしゃったようで、タムラ監督は「映画館で見てほしい作品なので、来てもらう機会があって来てもらえたことが嬉しい」とおっしゃっていました。この作品はシネスコ(12:5)で作られているためで、それを決めたのはコンテの段階だったそうです。制作のボンズにとっては、以前エウレカセブンで作画用紙の上下を切って疑似的にシネスコにしたことはあったものの、はじめてのちゃんとしたシネスコ作品なのだそうです。

以下、事前にTwitterで集められた質問への答えを、メモ書きをもとに記しておきます。当然ながら本編の重大な【ネタバレ】が含まれます。間違いがあったらすみません。とくに原作未読なので、原作に関する描写が正しくなかったらゴメンナサイ。

Q.冒頭シーンで恒夫と隼人が登場する前の“呼吸音”は誰のもの?
A.恒夫です。

Q.「お姉ちゃん、読んで」と読み聞かせをせがみ、彼女に絵を描くことを仕事にしたいと決意させるきっかけも作ってくれた里緒ちゃんの声は誰
A.中島唯さん。大阪出身の人で、今回は大阪出身の声優さんをたくさん集めました。

Q.田辺聖子先生の原作がある作品ですが、タムラ監督が映像化される時に気を付けた事は?
A.軽やかに描こうとしました。田辺先生は扱うテーマは重くても、大阪弁の妙で軽やかさがある。パラリンピックでもどの部分にハンディがあるということではなく、ストロングポイントを紹介してほしいという話がありました。描写が軽いと言われないよう、軽くではなく軽やかであろうとしました。

Q.舞、隼人、花菜の誕生日は?
A.これは脚本の桑村(さや香)さんに聞いてきました。は8月3日生まれ(獅子座)、O型。隼人は5月27日生まれ(双子座)、B型。花菜は7月14日生まれ(蟹座)、A型です。
※追記。ジョゼは3月3日生まれ(魚座)、AB型。恒夫は1月31日生まれ(水瓶座)、A型です。
※追記。タムラコータロー監督のツイートがあったのでリンクしました。

Q.あきらかに“人魚姫”を意識した作品だと思いますが、他に意識した作品は?
A.“パロディ”はなくしたいと思っていたので、とくにはありません。「おおかみこどもの雨と雪」の助監督をしたときに牛乳瓶に花を生けるシーンの参考に買った牛乳瓶があったので、クローバーを飾るために使いました。

Q.ジョゼが絵を得意にしたきっかけは?
A.原作で雑誌を切り抜いてコラージュを作っていた場面があるので、そこから。

Q.須磨の海岸でダンスさせようと思ったきっかけは?
A.ダンスのつもりはなく、はしゃいでいるつもりでした。説明で、恒夫の足がときどきもつれたりという話をして大城さん(大城勝さん?)から上がってきた原画が結果的にダンスのようになりました。

Q.舞の出身地はどこ?
A.舞は自分の出身地にコンプレックスを持っているという設定なので、そういうコンプレックスを持つ出身地を特定しちゃうのはマズいので、非公開ということにしてください。YouTubeで東北弁の動画はいっぱい見ました

Q.舞が感情的になるときに東北弁になりますが、キャラ設定のときに決まっていましたか?
A.キャラ設定のときに決めていました。舞の女性としての隙のなさは、彼女の努力ありきのものです。(脚本の)桑村さんが乗り移ったようです。
ところが、舞の存在が海外では伝わらないようで、舞は要らないとかコメントがあったのは残念です。
※舞こそが陰の主役だと思っていたので、これはビックリ。

Q.舞が見舞いのときにスカートをはいているのは勝負服ですか? ふだんは足を強調する服装でも、このときにロングスカートだったのは何か意図がありますか?
A.見舞いに行くので落ち着いた服装を選びました。季節感もあります。冬でも足を出してますが。

Q.玄関あがってすぐのところに冷蔵庫があるのはなぜ?
A.台所にも冷蔵庫がありますが、買ったものを台所まで運ぶのが大変なので玄関にもああります。これは美術の金子(雄司)さんが言い出したことで、他人の家には人に見せる前提でないものがあって驚かされることがあるということでした。

Q.恒夫との出会いでジョゼミサイルにしたのはなぜ?
A.地味に始まる作品なので、エンタメを見せたかった。恒夫に受け止めてほしかったという意味も込めています。

Q.二度目のジョゼミサイルについての監督の解釈は?
A.偶然すぎるけど、恒夫がジョゼを受け止め直すということを象徴的に描いています。

Q.エンドロールはEvan Callさんの曲がよくて映像を入れることにしたそうですね。
A.もともとエピローグはシナリオに書かれていました。曲ができ上ってから気分が乗ってきました。ジョゼをクルクルさせるところも本編のバンクだけでなく描き足しています。そこからふくらませました。

Q.大阪メトロとのコラボや聖地マップがありました。いわゆる聖地巡礼についての思いはありますか?(私の質問)
A.当時、大阪は注目されていた時期で、サミットがあったり、渡航者急増ランキングで1位になっていました。マイクロソフトfacebookで1分の動画を紹介していたこともある。古い大阪が取り上げらえることが多いので、今の大阪を描いてみたかった。別に宣伝費をもらっているわけではありません。

Q.ロケハンや取材での思い出はありますか?
A.通天閣の足元にある喫茶ドレミに行ったとき、領収書をもらおうとしたら、店員さんがボンズを知ってました。帰りが夜遅いのでアニメを見ているということでした。でもタムラコータロー監督の作品は知らないみたいでしたね。通天閣はほとんど出てこないのですが、足元が少しだけ出てきます。

Q.大阪で追加したかったシーンはありますか?
A.追加したかったところはないけれど、惜しいと思ったところはあります。御神木が突き刺さっている駅(京阪萱島駅)があるんですが、面白すぎてわざわざ取り上げる理由がありませんでした。

Q.ユキチの性別は?
A.オスです。大阪出身。

Q.監督にとっての虎と魚たちは何?
A.虎は悪意、魚たちは絶望と受け取られているけれど、そうは思っていません。前半は虎は悪意だけど、後半はそうではありません。魚たちも絶望とはとらえていません。そういう暗いタイトルではなく、もっと前向きなものととらえています。

Q.原作には障害者に対する性被害もテーマだったと思います。私はない方がいいとは思いますが、扱わなかった理由は?
A.そこはテーマという主軸ではないと思いました。それがテーマなら、もっと葛藤が生まれるはずだけど、原作にはそういう描写がありません。そういうことを乗り越える、という話ではなかったから、テーマだとは思っていません。
障害者であるジョゼが不自由している描写が足りないと言われることもありましたが、そういう描写をふやすと「かわいそうな子」になってしまいます。そうなると恒夫が同情で付き合ってるようになってしまい、そういう付き合いは長続きしません。そうはしたくなかった。

Q.(司書の)花菜さんは、原案では指輪があったり、婚約者がいる設定だったりしたそうですが、本編の彼女は付き合っている人はいますか?
A.(脚本の)桑村さんには聞いてないですが、恋愛経験はあっても、今はいないという気持ちです。

タムラコータロー監督、笠原周造プロデューサー、ありがとうございました。

新型コロナ: 自粛をやめるためには、強く自粛するしかない

■反自粛派の勝利
東京の新規感染者数が、1日4千人とか5千人という日が続いており、昨年来、オルタナティブブログやこの場のコメントで「日本人は特別だから自粛なんてしなくても感染者は増えない」とデマを流し続けることで感染者を増やし、飲食店や観光業にダメージを与えたくて仕方がなかった人たちからすれば、してやったりという状況に陥っています。そういう輩に限って、「医療がひっ迫するのは前から分かっていたことなのに、準備してない方が悪い」と主張しているのも興味深いところです。よほど記憶力が悪いか、根っからの嘘つきでもなければ、反自粛なんてできませんね。

■自粛の効果
菅首相が「世界でロックダウンをする、外出禁止に罰金かけてもなかなか守ることができなかった」とロックダウンの効果を否定したのは驚き(というよりデマ)以外の何ものでもなく呆れるばかりですが、もちろん自粛やロックダウンには効果があります。感染の発端となった中国では、それこそ死者の出なかった地域ですら長期にロックダウンして、感染拡大を抑え込みました。中国の累計感染者数は10万人に満たず、日本の10分の1以下、東京ですら3倍近い感染者が発生しています。

東京の緊急事態宣言も3回目までは効果がありました。7月12日から始まった4回目の緊急事態宣言をもってしても新規感染者を抑え込めないのはデルタ株の強い感染力に対して、ワクチン接種の割合が足りず、自粛が十分でないためです。そして自粛を緩めれば、もっと速いペースで感染が広がるでしょう。何度も書いたことですが、日本の民主主義が維持される限り「医療が間に合わなくなるのを諦めて自粛を解除しよう」なんてことにはなりません

■自粛はいつまで続くのか
東京で、今回の緊急事態宣言が出された7月11日における新規感染者数の7日間平均は734人でした。それが今日(8月23日)時点では4659人で、まだ減少に転じる気配がないくらいです。そもそも、3回目の緊急事態宣言では「疫学調査ができる100人まで減らしたい」はずだったのが、そこまで下げられずに解除された経緯があります。3回目に調子よく減少していた頃でも1週間に3割減、2週間で半減程度ですから、今すぐ自粛を強めてそのペースで減少させられたとしても6週間で600人まで減らすのが精いっぱいです。

もちろん、ワクチン接種が進めば抑止効果は生まれるでしょう。大雑把に計算すると、ワクチンに95%の感染抑止効果があるとして接種者が53%くらいで人流を半減させるのと同じ効果があることになります。ワクチン接種と人々の自粛がデルタ株の感染力を上回れば、新規感染者は減ります。米CDCの報告どおりデルタ株の基本再生産数が水疱瘡並(5以上)あるなら、集団免疫の獲得には8割以上の免疫獲得者が必要になるので、この状況でも一定のワクチン拒否者がいるのが悩ましいところです。新規感染者数を抑え込めなければ、それこそ冬を過ぎるまで緊急事態宣言を解除できないかもしれません

■季節
政府によれば、10~11月頃に希望者へのワクチン接種を終わらせる見込みのようです。ところで、昨年11月に新規感染者が増えたのを覚えているでしょうか。新型コロナ以前も、冬になってインフルエンザの感染者が増えていたように、気温と湿度が下がれば感染力は強まります。11月下旬には「勝負の3週間」という強い自粛要請が出されましたが、たいした効果は出ず、年明けの感染者急増を受けて2回目の緊急事態宣言が出されました。

オーストラリアやニュージーランドなど、これまでロックダウンで感染を抑え込んできた国でも、感染の抑え込みが難しい状態が続いています。これらの国の外出規制は日本よりも厳しいはずですが、日本よりもワクチン接種率が低いことと、南半球は冬なので気温や湿度が低く感染しやすい気候だということが推察されます。ワクチンを接種していれば(時間が経てば)感染してもほぼ重症化は防げるはずですが、感染者に対する特効薬がない現時点では、接種していない人にとっての感染リスクは変わりません。

オーストラリアが感染ゼロ戦略を断念したという報道があったことで、ロックダウンに意味がなかったとまで言う人がいるのだそうですが(どこのバカ?)、(デルタ株の感染力が強いため)ロックダウンしてもゼロに抑えることが難しく、ワクチン接種が進んだら緩めようという程度の話のようです。その程度には、「ワクチン接種」か「感染するか」という世界にはなりそうです。

■オマケ(インド)
感染力の強いデルタ株の震源地はインドです。ロックダウンで感染を抑え込んできたと思われてきたインドは、かつてBCGの効果だなんだと持ち上げられてきたこともあります。もはやBCGに有意の効果がないのは明らかですが、そのインドでの新規感染者数はずいぶん少なくなりました

インドで2回のワクチン接種が終わってるのは1割程度ですが、なんと抗体保有者は7割にもなっているそうです。つまり人口のかなりの割合が感染経験があるということです。これはデルタ株の基本再生産数が少なくとも3.3以上ということでもあります。そのわりに死者数が43万人程度(人口は日本の11倍)と“少ない”のは、感染者の死亡率が高い高齢者の割合が少ないからかと思うところですが(65歳以上は6.6%、日本は28.4%)、たんに追跡し切れていないだけで、"Three New Estimates of India’s All-Cause Excess Mortality during the COVID-19 Pandemic"(Center for Global Development)によれば、超過死亡の推計が340万~490万人にも及ぶとあります。単純に計算しても「何もしなければ日本で40万人死亡する」と予測した西浦博氏の推計に匹敵しますし、高齢者率の高い日本ではより多くの死者が出てもおかしくなかったでしょう。なお、現在、日本の致死率が下がっているのは感染者が急増していることと、高齢者を優先してワクチンの接種を進めたためでしょう。

【軽いネタバレあり】劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」評

日頃から「つまらない映画なんか作るのをやめて、面白い映画だけ作ればいいのに」と言い続けているのですが、見る側も見る側で「つまんない映画なんか見るのをやめて、面白い映画だけ見ればいいのに」ということはあります。東京国際映画祭で見て「これが2020年のベスト」と確信した「ジョゼと虎と魚たち」ですが、レビューサイトでは高い点を獲得しているのに興行収入ランキングの反応がイマイチのようで残念な限りです。

まったくネタバレせずに「ここがオススメ」と書くのは難しいのですが、といいますかネタバレをおそれて書くのをためらっていたのですが、いまさらながらジョゼ虎の魅力を書いておこうと思います。

・悪人が(あんまり)いない
悪人がいない設定でうまく盛り上げていくのは難しいと思うだけに、そういうストーリーに惹かれるのですが、主要な登場人物に悪意がないというのは見てて気持ちがよいものです。ただ、まったくいないわけじゃないです。タイトルの“虎”はある意味、そういう存在のメタファーですが、あまり目立つ描写はありません。

・脇役がいい
主人公に魅力のある作品がよいのもそうですが、正直なところキャラとして魅力的なのは脇役の人たちです。色んな意味で舞推しです。

・現代的に改変されている
原作未読、旧実写映画は未見ですが、色んなレビューを読んだり、結局wikipediaを見たりして、だいたいのストーリーは分かってきました。実のところ、実写版の評価が高い人からは、アニメ版はあまり高く評価されていないことが多いようです。ストーリー展開が改変されているため実写版のよさが失われている、と感じられるようです。本作品を単独で考えれば、よく考えこまれて作られていることが分かると思います。多少、“ご都合”がなくもないのですが、あくまでフィクションです。
障害者を取り上げた作品としては「聲の形」も好きなのですが、そちらを封切日に鑑賞したとき、カップルで見に来ていた人たちが最後にボソッと「思っていたのと違ったねー」とつぶやいたことを思えば、本作は十分デートムービーになります

・画がキレイ
アニメとして画や動き、背景などが丁寧に作られています。これは YouTube で公開されている冒頭シーンを見てもらえばよいでしょう。ストーリーはよくても画が惜しい、とか、キレイに作られているのに話が強引という“惜しい”と思う作品も少なくないのですが、本作はそういうところがほとんどありません。

もうひとつ、実写版は興収がよかったのに、アニメ版は良作*1なのに興収が微妙だったものに「君の膵臓をたべたい」という作品があります。この作品は原作イラストをloundrawさんが担当されたのですが、そのloundrawさんがジョゼ虎ではコンセプトデザインとしてかかわっています。キャラデザキャラクター原案は「荒ぶる季節の乙女どもよ。」の絵本奈央さん、キャラデザは「ホリミヤ」の飯塚晴子さん。もう一度言っておきますが、舞推しです。(ランダムのマグネットで舞が出なかったのは寂しい……)

・音楽がよい
ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」の音楽を担当されていたEval Callさんが、本作の音楽を担当されています。主題歌は「呪術廻戦」1クール目のOP曲「廻廻奇譚」を歌っているEVEさん。音楽の雰囲気は、前述の冒頭シーンで想像してください。

・LYNNさんが出てる(←オイ)
本作では、主役じゃ(舞でも)ないですけどね。前述のアニメ「君の膵臓をたべたい」ではヒロインでした。詳しくはコチラ

すでに上映終了しているところもありますし、もうすぐ終わりそうなところも多いのですが、何かの機会があれば、ぜひ鑑賞してください。

*1:個人の感想です

新型コロナ: 信者ビジネスと科学

蚊取り線香は効きませんね。相変わらず起きたまま寝言を書いている不思議な人がいますが、寝不足極まりないようですから、しっかり永眠を取るとよいでしょう。ああいう意味不明な愚痴は、何らかの経済的ダメージを受けているための八つ当たりなんだろうという気もしますが、ここまでバカだと、そのダメージはそもそもバカだから生じているのではないかという推測すらできてしまいます。

閑話休題

■新型コロナは“ただの風邪”か
そうあってほしいと願う人がいるのは分かりますが、もはや世界中のほとんどの科学者や為政者は、そうは思っていません。ノーガード戦法だったスウェーデンを含め、寒くなって感染者が増加しはじめた欧米では再規制に踏み切っています。現在の日本での死者が欧米に比べて少なく済んでいるのは、早くから対策したり、新しい生活様式を人々が守ってきたりして、相対的には感染対策が成功してきたからです。冬を迎えた北半球の先進国では、どこも感染者増からは逃れられていません。

日本以上に抑え込みに成功している国はありますが、そうした国では罰則付きの規制によって強く抑え込んでいたり、人口密度や高齢者率が低いといった感染が広がりにくかったという条件がありました。日本では、中国や韓国、台湾の成功を真似するために、より厳しく私権を制限しようという動きはありません。だから「これが精いっぱい」でもあります。

かつて、「新型コロナ: 「インフルエンザでも人は死ぬ」との比較」へのコメントで、宮沢孝幸氏の記事をもとに「新型コロナはただの風邪になる」と解釈し、突っかかってきた人がいました。宮沢氏はツイッターで情報発信されていたのでそのことを伝えたところ、以下のようにツイートされました(ツイート1ツイート2)。

今の現実をよく見てください。なぜ楽観的になれますか?普通に考えれば、とんでも無いことになるってわかると思うのですが。よく私に、今、決断すべきですかと質問されますが、私には判断する権限はない。でも、普通に考えたら決断するでしょう。このままだとあっという間に医療崩壊だと思います。

私は政治的発言はできません。一応公僕でありますし。お察しください。また、このツイートは私の個人的な見解です。研究においても、私の仮説は大抵外れます。私は自分の考えることを発信しますが、私を信じることも危険です。

直接発言を修正されたわけではないものの、ただの風邪だという認識が誤りであることは明確です。現在、死者数÷感染者数で求められる致死率は、ほとんどの先進国で1%以上となっており、かつて医学誌ランセットが「インフルと同じと考えてはいけない」と言及していたときの推測値0.66%を下回ってはいません。

こうした事実が明らかになっている状況で、「インフルと新型コロナは同じではない」と主張してきた私が、わざわざごく少数のバカが主張する意見に傾くわけがありません。そろそろ、いくら言ってもムダだということを理解してほしいものですが、そう訴えてもムダなのでしょうね。

■歌舞伎町のホストクラブで集団免疫は成立しているか
その宮沢氏は、その後も科学的にデタラメな発言を続けていました。最近では東京や大阪では11月下旬にピークアウトしてる、ほとんどの感染対策は過剰、といった記事がありました。そして、次のようなツイートがありました。

歌舞伎町のホストクラブでは今はまったく感染者は出ていません。それは観察結果です。目玉焼きモデルはそれを支持します。決してホストクラブが静かになったわけではないです。ホストクラブ内で集団免疫が成立しているのだと思います。

感染者が確認されないのは集団免疫が成立しているから、というのはいかにも安直な推測です。正確な数は分かりませんが、検索すると歌舞伎町だけで300程度のホストクラブがあるようです。たしかに報道されてくる例はあまり多くなく、検索してもとあるホストクラブで50人中28人がPCR検査で陽性だったという報道がある程度でした。

しかし、これはあくまで一例であり、本当に300ものホストクラブで集団免疫が成立するほど感染が進んでいたなら、そこに出入りする客にも感染が広がっていくはずですし、クラスターが大量に発生して感染者数はずっと多いはずです。いくらなんでもおかしくありませんか?という主旨の質問をしてみました。そもそも“夜の店”はホストクラブだけではありません。都内には7000くらいのキャバクラがあるそうですが、そちらからもとくに目だった報道はありません。そこでも集団免疫が成立しているというのでしょうか、という質問につなげたかったのですが、何の回答もいただけないままブロックされてしまいました。

ふと気が付くと前述した「ただの風邪」に対してお答えいただいたツイートも削除されていました。「間違っていた」と認めるようなツイートが残っていてはマズいということなのでしょう。

■GOTOは感染を広げたか
私もすべての予想が当たったわけではありません。緊急事態宣言の終了直後から感染者が増え始めていたので、感染の抑え込みもせずにGOTOキャンペーンなんて始めたら、感染者が急増するのではないかと心配したものです。新規感染者数は7月22日の開始直後(東京以外)には若干増加傾向でしたが、その後減り続け、少なくとも11月に入って寒くなるまでの3カ月間は一定の範囲で持ちこたえていました。「GOTOのせいで感染が増えた」というなら、開始2週間後くらいから新規感染者が急増していてもおかしくありませんが、そうはなりませんでした。

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日本

もちろん、旅行などが活発になり移動や接触の機会が増えれば、それだけ感染の確率が上がることになりますから無縁ではないでしょうが、「新しい生活様式」が功を奏していたのでしょう。冬になって感染者が増加する理由としては、寒くて窓を開けずに換気が悪くなる、乾燥して飛沫が小さくなれば簡単には落ちずに浮遊しやすくなるといった理由が挙げられています。これは世界的な傾向であって、日本固有のものではありません

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ドイツ

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イギリス

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スウェーデン

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韓国

もちろん季節的な感染者増の理由がある以上、夏に比べて厳しい感染対策が必要なことは言うまでもありません。かねて述べている通り、新型コロナは“ただの風邪”ではないからです。そして問題は医療体制です。各自治体が色々な工夫をして対応しており、自衛隊に協力を求めているところもあるくらいですが、そうした工夫や自治体ぐるみでの対応が必要な時点で“平常”ではありません。

また、前述の宮沢氏は「11月でピークアウトしたから自粛は要らない」と言っていましたが、そもそもピークアウト(実効再生産数が1未満になる)ことだけが重要なのではなく、医療が対応できるまで十分に新規感染者を減らす必要があります。そもそも対症療法しかない現時点では、いくら工夫してキャパシティを増やしたところで、感染リスクや感染後の後遺症や致死リスクをなくせるわけではありません。だから感染を抑え込む必要があるのです。

注意してほしいのは、日本も含め多くの先進国では過剰な自粛や規制はしていないということです。どの国も経済を動かさなければなりません。だから医療の限界まで引っ張った上で、医療崩壊しないように自粛や規制を始めるのです。経済を動かせる上限は医療サービスの限界までだと言ってもよいくらいです。そして感染が大きく広がっている欧米では、日本よりはるかに強く規制されているのが実情です。

現在、日本では欧米に比べてはるかに良好な医療サービスが提供されますが、そのために医者は過重労働を強いられています。欧米に比べて感染者数が少ないのに医療崩壊なんて言うのはおかしいという識者がいますが、だったら欧米並みに医療従事者の報酬を引き上げ、医療サービスのレベルを下げる決断をしなければなりません。ただし、そんな方向性を示す政治家・政党が国民に支持されるかどうか、私は疑問です。


■インフルエンザと新型コロナ
以前にも示しましたが、新型コロナに対する感染対策は、インフルエンザに対しても有効です。これだけ厳しい対策をしているので、今年はほとんどインフル患者が発生していません。そして、そんな状況であるにもかかわらず2~3桁多い新型コロナの患者が発生しています。それだけ感染が広がりやすいのです。

インフルエンザ 新型コロナ
2019年 2020年 2020年
~9/6 3813 3 4155
~9/13 5738 4 3799
~9/20 5716 4 3439
~9/27 4543 7 3033
~10/4 4889 7 3649
~10/11 4421 17 3573
~10/18 3550 20 3744
~10/25 3953 30 3878
~11/1 4682 32 4612
~11/8 5084 24 5940
~11/15 9107 23 9591
~11/22 15390 46 13502
~11/29 27393 46 14474

新型コロナは、必ずしも感染力が強い(基本再生産数が高い)とは言われていません。しかし、「発症前から感染性がある(45%は発症前の感染者から感染している)」「発症前はPCR検査で陽性になりにくい」といった研究がなされているとおり、発症した人が引きこもっているだけでは感染を抑え込めないのです。これが症状のない人もマスクをしたり、3密を避けたりといった「新しい生活様式」が必要とされている理由です。“ただの風邪”扱いしたアメリカで、どれだけ感染者が増えているかを見れば、感染対策の重要性は明らかです。

■信者ビジネスと科学
前述した通り「専門家がただの風邪と言っている」と、あたかも素人のこちらが間違っているかのようなコメントが書かれたわけですが、セオドア・カジンスキーの例を挙げるまでもなく、まともな肩書きがある人がすべてまともなことを言うとは限りません。頭がおかしくなっているか、嘘をついている可能性がいくらでもあります。宮沢氏は聞いてくれる人だけ聞いてくれればいいとツイートしていますから、アクセス数が稼げればよいのかもしれません。宮沢氏が、なぜ間違いを認めたツイートを削除したのか、考えてみるといいでしょう。

なぜ科学的に間違った発言をする人を信じる人たちがいるかというと、自分にとって都合が悪い“事実”に向き合うことができないからです。「自分の置かれている状況が悪いのは、他の誰かが悪いためだ。もっと良くすることができるのにやってないから私は被害者だ」という意識を後押ししてくれる“専門家”は心の支えになるでしょう。科学的な議論とは“事実”に向き合うことからはじまりますが、そのためにはやりたくないが「やるべきこと」、あるいはやりたいけど「やってはいけないこと」と向き合わねばなりません。それを嫌がる気持ちを「肩書きを持つ専門家」が後押ししてくれるなら、こんなに気持ちのいいことはありません。しかし、事実に向き合えなければ、それはもはや宗教です。だから、事実をもって叩かれるのです。

私は、必ずしもどの宗教を信じるかを妨げようとは思いません。日本には信仰の自由があります。しかし、事実に基づかない宗教は、誰か別の人に強制することはできませんし、社会に影響することにでもなったら害悪です。残念ながら、そういう専門家に煽られている自治体もあるのですが、糖尿病だった当時7歳の子供がインスリンの投与をやめてしまい死亡した事件のように、事実に向き合えない信者は、より厳しい事実に直面することになるだけです。

ここでは信者を募集していませんし、他の信者がここに来て説得しようとしてもムダなのは、すべてが事実をベースにしているためです。

■集団免疫とスウェーデン
スウェーデンの感染対策リーダーであるテグネル氏がストックホルムで集団免疫を獲得しつつあると発表したのは4月です。実際には、それ以降も感染者数は増え続けましたが、それでもしばらくは落ち着いたものでした。ところが、冬が近づくにつれ、ふたたび感染者の急増を招いています。前述の通り、そのせいで8人を超える集会を禁じるなど、日本以上に厳しい自粛が求められています

ストックホルムは集団免疫が成立しているので、それ以外の地域で増えている」というわけではありません。最新のレポートによれば、圧倒的に感染者数が多いのはストックホルムです(p.11)。しかも、週ごとに悪化している検査陽性率が全国で13.3%であるのに対し(p.20)、ストックホルムでは21.3%となっています。どうみても検査が追い付いていない状況です。集団免疫など全然成立していないのです

では、経済面はどうでしょうか。同じ北欧のノルウェーフィンランドでは、スウェーデンに比べて人口当たりの死者数が1桁少なく済んでいます。そして、文春の記事には「国際通貨基金によれば今年の経済成長率の見通しは、スウェーデンがマイナス4.7%で、ノルウェー(マイナス2.8%)やフィンランド(マイナス4%)を下回るという」とあります。

何度も書いてきたことですが「感染か経済か」ではありません。「感染を抑え込んでこそ、経済が動かせる」のです。感染者や死者の増加を受け入れたところで、経済が元通りになるわけではないのです。中国や韓国、そして日本も、欧米のような厳しい再規制に踏み込むことなく経済を動かしています。それは欧米ほどには感染を広がらないうちに抑え込んだためです。冬になって感染が広がりやすくなり、より厳しい生活様式が求められているのはしかたがありません。暖かくなれば、もう少し緩めてもよくなるはずです。今は、医療の限界を超えないように抑え気味に生活するしかないのです。

トランプ大統領アメリ
事実に向き合えない人たちがせいぜい地方自治体にとどまっている日本と違い、大変なのがアメリカです。大統領選挙では証拠も示さず不正を訴え、ことごとく裁判所に退けられているトランプ大統領ですが、極めつけはこの発言でしょう。

Trump attacked Biden by saying his opponent would 'listen to the scientists' in dealing with COVID-19"(トランプは、対抗するバイデンを「彼は科学者に耳を傾けるぞ」といって攻撃した

自分の支持者に向かって「科学者の話を聞くヤツなんかを大統領にしていいのか」と言っているわけです。なお、バイデン氏は「Yes」とだけ答えています。

もともとトランプ大統領は新型コロナを軽視していました。3月9日には、このようにツイートしています。

So last year 37,000 Americans died from the common Flu. It averages between 27,000 and 70,000 per year. Nothing is shut down, life & the economy go on. At this moment there are 546 confirmed cases of CoronaVirus, with 22 deaths. Think about that!

(昨年、普通の風邪で37000人のアメリカ人が亡くなりました。平均すれば年に27000~70000人ですが、何もシャットダウンせず、生活や経済は動いています。現在、コロナウイルスの感染者は546人で、死者は22人です。それを考えてみてください。)

仕方がない面はあります。何しろ2月下旬まで米CDCが配っていた検査キットは欠陥品だったので、感染者を正しく把握できていなかったからです。3月末には「死者数は「150万~220万人」、対策を取った場合でも「10万~24万人」が死亡する」と発表され、方針が転換されました。

ところが、トランプ大統領は1カ月も経たないうちに予測を下方修正して、「6万人から6万5000人になるという見通しを示し」ました。この時点で4.3万人が亡くなっていたのにです。ちなみに4月末には6万人を超えていました。

選挙前の最後の討論会(10月24日)の記録があります。「第2回テレビ討論 トランプ、バイデン両候補 最後の直接対決

新型コロナウイルスで220万人が亡くなるとも言われていたが、われわれは世界最大の経済大国を閉鎖して中国から来た恐ろしいウイルスと闘ってきた。新型ウイルスは世界的なパンデミックだ。アメリカでもフロリダ州テキサス州で感染者が急増したが、今は過ぎ去った。ワクチンもまもなくだ。数週間以内に発表されるだろう

220万人が亡くなるという予測は、トランプ大統領が死者数を下方修正する前の話です。220万人が亡くなると思わなくなったから経済を再開させたのではないのでしょうか。トランプ大統領は数十万人にも及ぶ死者数に対しても、「220万人よりマシになったんだ」と主張していますが、本当に220万人が亡くなると思っていたのなら、なぜ経済を再開させたのでしょうか。もっともバイデン氏は、まったくそうしたことに触れていなかったのもイマイチでした。

そもそもフロリダ州テキサス州での感染者の増加は過ぎ去っていませんトランプ大統領は、もはや選挙結果にイチャモンをつけたり、できる限りの悪態をついたりしているだけで、自身の行動には何の反省もないようです。さすが「科学者に耳を傾けない」大統領です。ここからどのように対策を取るにしても、バイデン次期大統領は苦労しそうです。

■報道風ワイドショー
完全に余談ですが、テレビが根拠なく恐怖を煽った話まで、こちらに向けてくるとはお門違いも甚だしいです。日本は検査が足りないから感染が広がるのだとか、精度の低い、偏った抗体検査の結果で、感染実態は確認された感染者数より桁違いに多いだのと煽っていた報道風ワイドショーやそこに出ていた自称専門家の人たちは、大量の検査をもってしても社会の再規制に至るほど感染を広げてしまった欧米や、厚生労働省の無作為抽出による抗体検査でごくわずかな陽性者しか見つけられなかった事実と向き合えているのでしょうか。

もはや確認すらしなくなってしまったので、知ったことではないですが、今なお恥ずかしくもなく放送を続けたり、メディアで見かけたりしていることを思うと、反省しているようすはまったく見られません。私は、それを批判することはあっても、彼らの報道責任は彼らにあるのであって、一緒くたに批判を受けるいわれはありません

※2020/12/10追記。
本文を読めない人が相変わらずバカなことを書いていますが、スウェーデンと近隣国の比較を挙げた通り「自粛しなかった方が経済ダメージを受けた」例がありますし、そのスウェーデンも今は日本以上の自粛に動いています。実際、「自粛しなければ元通り経済を動かせた」、つまり「自粛を弱めれば/しなければ経済的な理由による自殺者は増加しなかった」という可能性はありません。一方、新型コロナによる死者数は自粛や規制が遅れた先進国(とくに人口密度や高齢者率の近い国)と比較すべきであって、「人口当たりの死者数の差」こそが「早い対策によって減らすことができた人数」です。日本の死者数が少ないことは自粛した結果であって、自粛しなくても少なくて済んだわけではありません。
普通の理解力を持つ人には改めて説明するようなことでもありませんが、念のため。

漫画実写化邦画ベストテン

ワッシュさんの「漫画実写化邦画ベストテン」企画への投票です。

  1. ピンポン
  2. ちはやふる 結び
  3. 恋は雨上がりのように
  4. ファンシイダンス
  5. 翔んで埼玉
  6. かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜
  7. 斉木楠雄のΨ難
  8. CASSHERN
  9. 君に届け
  10. ReLIFE リライフ

 

1.ピンポン
初鑑賞したときはマンガ原作であるとは知らなかったけれど、文句なく面白かった。後にアニメになるときに“劣化”しないかと、今とは逆の心配をしたくらい。結局、アニメもよかったけど、やはり最初に見た印象が強いので、実写版の方が評価は上。アクマの彼女がペコをほめるシーンが好き。

2.ちはやふる 結び
すぐれた原作漫画が丁寧にアニメ化された後での実写映画。広瀬すず主演に不安を感じずにいられようかと思っていたが、見事な実写化。そぎ落とすところはバッサリそぎ落としつつ、原作のエッセンスをうまく取り上げた脚本が素晴らしい。作品単位では「ちはやふる 上の句」「ちはやふる 下の句」もランクインさせたいところだけど、ここは前後編を受けた完結編のみで投票。「下の句」の締めくくりから「結び」の冒頭のつなげ方がよかった。

3.恋は雨上がりのように
オジサンに恋をする女子高生という設定からして「ねーよ」とツッコミを入れずにはいられないのに、展開に惹かれて最後まで読み続けてしまった原作漫画。アニメもよかったけれど、小松菜奈といい、大泉洋といい、原作キャラを彷彿させるキャスティングがよかった。とくに小松菜奈の疾走シーンは、ちゃんと疾走している感じがした。

4.ファンシイダンス
今回の企画ではじめて漫画原作であることを知った作品。原作は未読。周防正行監督+本木雅弘主演としては、続く「シコふんじゃった。」の方が好きだけれど、これも良い。

5.翔んで埼玉
原作を読んだのは映画化発表後だけれど、これをよく映画にしようと思ったな、という作品。GACKT二階堂ふみのキャスティングが絶妙かつ、ギャグに徹した物量で笑わせてくれた。設定以外は書き起こしエピソードと思いきや、ちゃんと原作に元ネタがあることが驚きでもあった。

6.かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜
アニメから入ったクチだが、原作がよく、アニメ化もよかった。それだけに、実写化発表時は「ここでも橋本環奈か」という印象はぬぐえなかったが、よくできていた。アニメ(1期)のクライマックスが中盤の“イイハナシ”程度に流されてしまったのはしかたないが、単体の映画作品としては十分楽しめる。

7.斉木楠雄のΨ難
こんなものまで実写化するんだ、どれだけ原作不足なんだと思ったけれど、意外にしっかり作られていた。ただ、原作(アニメ)では蝶野のマジックがテレビから学園祭に舞台変更されていたのはいただけない。

8.CASSHERN
そういえば、これもマンガが原作だった、と思い出した作品。ストーリーに対する批判はあったけれど、それほど破綻しているとは思わないし、どのシーンを切り取ってもポスターとして成立するんじゃないかという映像がよかった。

9.君に届け
アニメから入った作品で、原作もそろえた。あの雰囲気を実写でやるのは難しい気がしたが、多部未華子がよかった。あとはあまり覚えていないが、ロケ地が地元なので一票。

10.ReLIFE リライフ
これもアニメから入った作品で、原作がベスト。実写化は不安があったものの無難にまとまっていたと思う。キャスティングもよかった。原作のよい場面が軒並み端折られていたのは、2時間程度の映画としてはしかたがないところ。

「どうにかなる日々」はどうにかならなかったのか

1カ月ほど前に封切られた「どうにかなる日々」について、もうほとんどのところで上映を終了しているようだが、改めて主張しておきたいことがある。ただし、作品そのものではない。本作は1時間ほどのオムニバス(4話構成、3&4話目はひとつながり)であり、内容は佳作といったものである。もとより大作扱いされるようなものではなく、万人受けを狙ったものではないが、こういう雰囲気の作品が好きな人はそれなりにいるだろうという内容である。

問題は本編上映前に流される「スペシャルキャスト対談」についてである。封切りから1週間ごとに3回に分けて、それぞれのエピソードの主演声優たちが作品の魅力を語ってくれるというのである。いや、これを「上映前」に流さないでほしかった。常々、アニメ作品にはプロの声優を使ってほしいと思っているのだが、それは棒読みやら不自然な抑揚といったことで作品を台無しにされるのが嫌なだけではない。芸能人や俳優が声優をやると、どうしても「その人」が思い浮かんできて、“絵空事”であるはずのアニメに“現実”が混じってしまい、感情移入しにくくなってしまうという理由がある。

「どうにかなる日々」は、せっかくプロの声優をキャスティングしているのに、作品上映前に声優の対談を流してしまうことで、そうした“現実”を印象付けてしまったのだ。そんなテコ入れをしたかったのなら、最初から芸能人を使えばよかったのに、とさえ思ってしまう。どうしても、こういうことをしたいのなら、今後は「上映後」に流してほしいと思う。